世界的“演劇の聖地”利賀から発信する気鋭プログラム 濱田元子
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舞台 SCOT サマー・シーズン2023
地方創生が叫ばれて久しい。今年、文化庁の機能の一部が京都に移転したが、政治・経済・文化の東京一極集中の解消はどれほど進むのだろうか。そんななかで、47年前に東京から富山県南砺市利賀(とが)村に移り、グローバルな活動を続けているのが、演出家の鈴木忠志率いる劇団「SCOT」だ。東京を介さず、直接世界とつながり、発信する。
本拠地である富山県利賀芸術公園には、ギリシャ風の野外劇場や合掌造りを改造した新利賀山房など六つの劇場が点在。いまや利賀は世界的な「演劇の聖地」として知られる。
そこを会場に毎年開かれているのが演劇フェスティバル「SCOTサマー・シーズン」だ。今年はインドネシアや日本の気鋭のアーティストも迎え、充実したプログラムとなっている。
SCOTは、「トロイアの女」(エウリピデス原作、鈴木演出)と「ディオニュソス」(同)、「世界の果てからこんにちはⅠ」(鈴木構成・演出)を上演する。
「トロイアの女」は、約2500年前に書かれたギリシャ悲劇を、鈴木が現代的な視点から構成している。戦いに敗れ、国土は破壊され、男たちは根絶やしにされ、残った女性は奴隷となる。今もなお戦いが絶えない世界に刺さる作品だ。
狂信的な宗教集団と政治権力の対立の中で犠牲になる母親の悲劇を描く鈴木の代表作「ディオニュソス」は、日中韓の俳優が共演する3カ国語バージョン(日本語字幕付き)。今秋には日本ASEAN友好協力50周年記念事業としてインドネシア・ジャカルタで上演される。
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週刊エコノミスト
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