教養・歴史アートな時間

光をテーマに厳選120点 モネ、ターナー、リヒター――ビッグネーム勢ぞろい 石川健次

クロード・モネ《エプト川のポプラ並木》 1891年 Photo:Tate
クロード・モネ《エプト川のポプラ並木》 1891年 Photo:Tate

美術 テート美術館展 光――ターナー、印象派から現代へ

 図版の作品に見覚えがある人は少なくないだろう。フランス印象派の巨匠、クロード・モネ(1840~1926年)は1890年代、異なる光の条件下で積み藁(わら)やポプラ並木、ルーアン大聖堂など同じモチーフのさまざまなヴァージョンを描く連作に取り組んだ。

 季節や天候、時刻とともに絶えず変化する光が、モチーフに、風景に及ぼす影響を探求した。セーヌ川支流のエプト川に沿って並ぶポプラ並木を描いた連作のなかの1点が、図版に挙げた作品だ。

 これら連作でモネは、刻々と変化する光に彩られた自然の一瞬を描きとめようと、夜明けに描き始めて光の変化に合わせて次から次へと描き、1日に10を超える作品を描くこともあった。ポプラ並木が伐採されると知ったモネは、連作を完成させるため、「費用を自ら負担して伐採を阻止した」(本展図録)という。すごい執念だ。

 英国を代表するテート美術館のコレクションから光をテーマに厳選された約120点が本展に並ぶ。英国が誇るロマン主義の画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851年)やドイツ出身で1932年生まれの現代アートの巨匠、ゲルハルト・リヒターなどビッグネームがそろう。

《湖に沈む夕日》など、ターナーの作品が印象深い。画業を重ねるうちに細部に注意を払わなくなったターナーは、「光が大気に与える効果を強調」(本展図録)してゆく。形態を識別しがたい鮮烈な色彩が広がる画面は、一方で情緒にあふれ、象徴的、暗示的にも…

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