中国輸出の新御三家=新三様がGXの波に乗り活況 神宮健
中国景気全体が低迷している一方で、脱炭素社会に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)関連分野が高い伸びを示している。中でも注目されるのは、主力輸出品の電気自動車(EV)、リチウム電池、太陽電池だ。従来の中国輸出の御三家である「衣服、家具、家電」(老三様)にちなんで、「新三様(新三種)」と呼ばれる。
上半期の輸出全体が前年同期比3.7%の伸びにとどまる中、「新三様」商品の輸出は同61.6%増加し、全体の伸びの約半分を占めた。工業生産付加価値でも、上半期全体の伸びは同3.8%増だったのに対しリチウム電池は同29.7%増だった。新エネルギー車は生産量ベースで同35.0%増、太陽電池は同54.5%増だった。
政府のインフラ投資などを含む「固定資産投資」は全体で同3.8%増と低迷したが、自動車製造業は同20%増、電気機械・器材製造業は同38.9%増で、EVなどのGX関連が影響したとみられる。
「新三様」商品の主な輸出先は、米国、欧州連合(EU)、英国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など。中国企業が世界の車載電池市場のシェアの約6割を占めているように、新三様商品は国際競争力があり、各国で強まる脱炭素化の動きにも乗っている。
実際、今年第1四半期に中国の自動車輸出台数が日本を抜いて世界第1位となった背景には、新エネルギー車の輸出台数が前年同期比で2倍強と全体を後押ししたこともある。
リスクとしては、米国などによる中国製品に対する輸入規制が挙げられる。ただし、先進国の対中戦略がデカップリング(切り離し)からデリスキング(リスク低減)へ表現を変化させたように、サプライチェーンから中国を完全に切り離すのは難しい。中国も、発展途上国の市場の開拓や現地生産などを進めている。
原材料価格の変動リスクに対して、中国は産業チェーン全体のコントロールを目指しており、実際、リチウム電池の中国…
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週刊エコノミスト
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