いつでも「ととのう」自宅でサウナ――深田渚央さん
Vanwaves代表取締役社長 深田渚央
サウナ施設に行かなくても自宅で本格サウナが楽しめたら──。都心マンション在住者のそんなニーズに応えた。(聞き手=位川一郎・編集部)
家庭用サウナ「IESAUNA(イエサウナ)」を販売しています。もともと「バンライフ」(車を使った自由な暮らし方)に憧れがあり、2020年に起業してキャンピングカーをリースする事業を始めたんですが、オプションのテントサウナが結構人気で、サウナ事業のきっかけになりました。ただ、アウトドアのテントサウナは競合が増えそうでした。違うポジション取りをしようと、都心のマンション在住者をターゲットにIESAUNAを開発しました。
特徴の一つは省スペースです。畳1畳程度で、ベランダに置けます。価格は約20万円。熱源はバイオエタノールで、煙が出ません。普通、テントサウナはまきストーブや電気ストーブを使いますが、まきは煙が出て近隣に影響を及ぼします。電気だと日本の100ボルトの電圧では50度とか60度とかで、80度を超えるサウナにするには200ボルトへの工事が必要です。バイオエタノールをサウナに活用した製品は他にありません。
発売から1年半近くで約800台販売しました。想定よりいい数字です。サウナ人気は盛り上がっていますが、施設は混雑してゆっくり入れないとかで、「自宅にあったらいいのに」と目が向き始めた。タイミングがよかったですね。継続的に入って心身のコンディション調整をされる方が多いと思います。ポイントは、プライベートな空間、「ゼロ距離」、それにコストです。
今後は、「サウナ好きがうらやましがる家」をコンセプトに、中庭にサウナ、水風呂、外気浴の動線がある一戸建て住宅の販売などにも関わって、プロダクトだけでなくライフスタイルも売っていくつもりです。韓国でのIESAUNAの販売も進めようとしています。
自分を取り戻す「余白の時間」
起業したのはインドネシア駐在の経験が大きかったですね。現地には経営者クラスの日本人が多く、自分の裁量で自分の人生をドライブしている方々と話す機会が増えて、チャレンジしたい思いが強くなりました。サウナとの出会いもありました。駐在していると一瞬孤独になる場面があるんですね。日本人が3人でインドネシア人が50人。いきなり実力以上のポジションに就かされたみたいな。そんな時に近くのサウナに入って、自分は何のために来たのかなとか、インドネシアの人に貢献できることって何かなと考える。自己内省できる時間でした。
僕がやっているサウナとキャンピングカーは一見関係なさそうですが、共通点があります。車中泊の旅は、目的地を定めず好奇心の赴くままです。予定調和じゃないところに新しい発見があり、思いをはせる時間、「余白の時間」が存在する。自分に帰れる場所や時間を作れるサウナも同じです。
これからもIESAUNAを伸ばしますが、一方で「旅する暮らし」の領域も広げます。6月に千葉県君津市で3000平方メートルの山林を購入しました。バンライフの交流拠点にして、プライベートサウナの施設も作ろうと思います。来年の夏ごろオープンする予定です。
企業概要
事業内容:バンライフ型ホテルの運営、ホームサウナの販売、コーティング剤の販売・施工
本社所在地:千葉県八街市
設立:2020年3月
資本金:300万円
従業員数:5人
週刊エコノミスト2023年8月29日号掲載
深田渚央 Vanwaves代表取締役社長 いつでも「ととのう」自宅でサウナ