新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 アートな時間

体感せよ!実物大セットで撮られたストップモーションアニメ 勝田友巳

©︎Diluvio&Globo Rojo Films,2018
©︎Diluvio&Globo Rojo Films,2018

映画 オオカミの家

 動く絵=アニメーションは映画の原点だ。映画草創期にも、こんな具合で作られていた。黒板の前にカメラを据え、チョークで絵を描いてシャッターを切る。絵を消してほんの少し変えて描き、またパシャリ。24回繰り返すと1秒分の映画が出来上がる。単純で素朴。しかし恐ろしく手間と時間がかかる。だから最初期のアニメはせいぜい数分とごく短く、動きはたわいないしストーリーもないに等しい。

 それから130年の間にアニメの大型化と効率化は極限まで進み、今やコンピューター万能だ。しかし、アニメの進化の方向は一つではなかった。1枚ずつ撮影する手作りアニメも脈々と生き残り、「オオカミの家」はその極致だろう。作品に目を見張り、完成までの道のりを想像して気が遠くなる。

 映画は、立体物を少しずつ動かして1コマごとに撮影するストップモーションアニメ。森の中の家に逃げ込んだ少女のマリアと2匹の豚が出会い、初めは家族のように暮らすものの、次第に悪夢のような混沌(こんとん)へ陥っていく。キリスト教や土俗信仰、人種的、社会的差別も示唆する詩的な物語もさることながら、驚異的なのはその映像だ。しかしそのすごさ、言葉で説明するのが難しい。

 家はミニチュアではなく、実物大で建てたセット。登場人物たちは、壁に描かれた絵や立体の造形物として、変幻自在に現れる。全編を通してカメラは切れ目なく動き続け、まるでワンカットで撮影したようだ。

 たとえば壁に描かれたマリアが振り返る。同じ壁に絵を塗り重ねていくから、振り向く間にペンキ…

残り630文字(全文1280文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事