体感せよ!実物大セットで撮られたストップモーションアニメ 勝田友巳
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映画 オオカミの家
動く絵=アニメーションは映画の原点だ。映画草創期にも、こんな具合で作られていた。黒板の前にカメラを据え、チョークで絵を描いてシャッターを切る。絵を消してほんの少し変えて描き、またパシャリ。24回繰り返すと1秒分の映画が出来上がる。単純で素朴。しかし恐ろしく手間と時間がかかる。だから最初期のアニメはせいぜい数分とごく短く、動きはたわいないしストーリーもないに等しい。
それから130年の間にアニメの大型化と効率化は極限まで進み、今やコンピューター万能だ。しかし、アニメの進化の方向は一つではなかった。1枚ずつ撮影する手作りアニメも脈々と生き残り、「オオカミの家」はその極致だろう。作品に目を見張り、完成までの道のりを想像して気が遠くなる。
映画は、立体物を少しずつ動かして1コマごとに撮影するストップモーションアニメ。森の中の家に逃げ込んだ少女のマリアと2匹の豚が出会い、初めは家族のように暮らすものの、次第に悪夢のような混沌(こんとん)へ陥っていく。キリスト教や土俗信仰、人種的、社会的差別も示唆する詩的な物語もさることながら、驚異的なのはその映像だ。しかしそのすごさ、言葉で説明するのが難しい。
家はミニチュアではなく、実物大で建てたセット。登場人物たちは、壁に描かれた絵や立体の造形物として、変幻自在に現れる。全編を通してカメラは切れ目なく動き続け、まるでワンカットで撮影したようだ。
たとえば壁に描かれたマリアが振り返る。同じ壁に絵を塗り重ねていくから、振り向く間にペンキ…
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週刊エコノミスト
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