経済・企業図解で見る電子デバイスの今

国内生産増強を図るリチウムイオン電池 津村明宏

パナソニックエナジーの円筒形車載電池(左から1865、2170、4680セル)パナソニックエナジー提供
パナソニックエナジーの円筒形車載電池(左から1865、2170、4680セル)パナソニックエナジー提供

 EVシフト加速で、リチウムイオン電池の市場拡大が続く見込みだ。日本政府は国内生産の増強を支援している。

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 半導体と並び、日本政府によって経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資」に位置づけられたリチウムイオン電池(LiB)。自動車のEV(電気自動車)シフトに伴う車載用電池の需要増に加え、今後はカーボンニュートラルの実現に資する電力貯蔵向け定置用蓄電池としての伸びも想定されており、経済産業省が2023年6月に公表した「半導体・デジタル産業戦略」では、車載用と定置用で19年に5兆円だった世界市場が30年には約40兆円、50年には約100兆円にまで拡大すると予測している。

 LiBは日本で開発・実用化され、技術優位で初期こそ日本企業がシェアを獲得していたものの、市場の拡大に伴って、近年は国の支援策や設備投資額に勝る中国・韓国メーカーが急速に生産能力とシェアを拡大。これに伴い、日本企業は次世代といわれる全固体電池の開発に先行して取り組んできたが、同戦略ではLiBの市場拡大が当面続き、このままではLiBを輸入に頼らざるを得なくなるとの危機感から、LiBの国内生産拡大とサプライチェーン確保を支援していくことに決めた。

 同戦略が掲げた目標が、(1)遅くとも30年までにLiBの国内生産を現有の20ギガワット時程度から150ギガワット時に拡大する、(2)日系企業のLiBグローバル生産能力を30年までに600ギガワット時とする、(3)30年ごろに全固体電池を本格実用化するとともに、LiBのリサイクル体制を整備するとのことだ。並行して、リチウムやニッケル、コバルトといった重要鉱物の安定確保も進める。

 LiB市場では、生産能力ベースで中国のCATLが世界市場の約3割を握っており、これに韓国のLGES、中国のBYDが続き、日本企業では米テスラに供給しているパナソニックエナジーが4位にいるが、近年はBYDや中国3位に位置するCALB(中創新航科技)らの伸びが大きく、日系企業のシェアは低下傾向にある。

投資計画が具体化

 特定重要物資に指定した蓄電池に対して生産基盤の強化を図るため、日本政府は22年度補正予算で3316億円を計上。これにより、日系企業の設備投資や技術開発を助成することとなり、複数の投資計画が具体化してきた。

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 LiBセルに関しては、ホンダとGSユアサ、両社の合弁会社であるブルーエナジーが計画する年産20ギガワット時の増産投資が助成対象に認定された。車載・定置用LiBの研究開発や量産に向けた製造技術の開発を行うもので、国内で量産…

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