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生成AIに不可欠なGPUの大手エヌビディアが大飛躍 津村明宏

エヌビディアの最先端GPU「GH200」はGPUの周囲に高速DRAMが大量に実装されている エヌビディア提供
エヌビディアの最先端GPU「GH200」はGPUの周囲に高速DRAMが大量に実装されている エヌビディア提供

 生成AIの注目が高まる中、キーデバイスであるGPUの需要が増大し、大手の米エヌビディアは業績を伸ばしている。

組み立て企業の設備投資が伸び、DRAM業界も黒字転換へ

 2023年におけるコンピューター業界の話題は、米オープンAIが公開した生成AI(人工知能)「チャットGPT」がさらってしまったといって過言ではない。生成AIとは、データのパターンや関係を学習して新たなコンテンツを生み出せるAIを指し、チャットGPTに関しては、入力された質問に対して、まるで人と対話しているかのような感覚で適切な回答を生成できる点が世界的に大きな注目を集めた。米ボストン・コンサルティング・グループによると、生成AIの市場規模は22年の90億ドルから27年には1210億ドルまで成長すると予測されており、我々はまだ普及の入り口に立っているに過ぎない。

 こうした生成AIの駆動に不可欠なハードウエアが、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(画像処理回路、GPU)だ。GPUには、データの処理を行うコアが大量に搭載されているため、AIの基礎となる学習データを並列処理しやすい。比較的単純な計算であれば、CPU(中央演算処理装置)よりも早く学習することが可能であり、生成AIに必要な大規模言語モデルの構築にうってつけなのだ。これにより、AIの開発や運用にはGPUが不可欠となり、関連ソフトウエアを豊富に用意し、ソリューションとして提供できる米エヌビディアのGPUへのニーズが飛躍的に高まっている。

高水準の需要が継続

 業界関係者の度肝を抜いたのが、米エヌビディアが23年5~7月期の売上高が前年同期比で2倍近くになると発表したことだ。GAFAMと呼ばれる米グーグル、アップル、フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)、アマゾン、マイクロソフトは足元でデータセンターへの投資を抑制しているが、こと生成AI向けに関してだけは投資を加速しており、これがエヌビディア製GPUの需要拡大を大きく後押しした。もちろん、GAFAMに限らず、その引き合いは消費者向けインターネット企業、クラウドサービスプロバイダー、エンタープライズ企業、AIスタートアップ企業など広範囲に及び、今後数四半期にわたって高水準の需要が続くと説明した。

 これを契機に、エヌビディアの時価総額は5月に1兆ドルを突破。そして、8月に発表した5~7月期の売上高実績は、ガイダンスの上限値だった112億ドルを大きく上回る前年同期比2倍の135億ドルを記録し、需要の高まりを数字で証明してみせた。

 5~7月期の増収のけん引役となったデータセンター部門は、売上高が前年…

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