日本研究60余年 ロナルド・ドーア「日本はこの10年で怖いほど変わった」(2006年11月7日)
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週刊エコノミストは、各界の第一人者にロングインタビューを試みてきました。2004年から「ワイドインタビュー問答有用」、2021年10月からは「情熱人」にバトンタッチして、息長く続けています。過去の記事を読み返してみると、今なお現役で活躍する人も、そして、今は亡き懐かしい人たちも。当時のインタビュー記事から、その名言を振り返ります。※記事中の肩書、年齢等は全て当時のままです。
社会学者・ロンドン大学LSE名誉フェロー ロナルド・ドーア
ワイドインタビュー問答有用(2006年11月7日)
日本社会を鋭く分析する英国人社会学者、ロナルド・ドーア教授は、最近の日本の変化を懸念する。長年の日本とのかかわりや日本への思い、変化の背景などを聞いた。(聞き手=原沢政恵・編集部)
ドーア教授は英国ボーンマス生まれの81歳。17歳の時に陸軍の通訳養成コースで日本語を学び始めて以来、60年以上も日本研究を続けてきた。初期には日本の農村を丹念に歩き、その後は多くの工場や会社を回って、現場から日本人や日本社会を観察してきた稀有な外国人研究者である。その成果は『都市の日本人』(1958年)、『日本の農地改革』(59年)、『イギリスの工場、日本の工場』(73年)、『日本型資本主義と市場主義の衝突』(2001年)、『働くということ』(05年)、『誰のための会社にするか』(06年)など多数の著書に詳しいが、その特徴は日本に対する深い理解と愛情、同時に決して失われない冷静で客観的な視点だろう。そのドーア教授の日本研究は、実は、いくつかの“幸運”によってもたらされたのだという。
日本語志望ではなかったが
── 日本語を学ばれたきっかけは。
ドーア 第2次世界大戦中にロンドン大学に設置された陸軍通訳養成コースは、トルコ語、ペルシャ語、中国語、日本語の4コース一括募集でした。合格時点で志望を聞かれたのですが、まだ世界のことなど何も知らない。トルコだけは学校の歴史の時間に多少学んだので第1志望はトルコ語。日本は敵国で日本人はひどい連中、中国は同盟国で蒋介石はクリスチャンの紳士というくらいの認識で、第2志望を中国語にしました。それが、ふたを開けてみたら「お前は日本語」。私の人生の最大の幸運のひとつでした。
1年半ほど勉強したころ、教師が足りなくなり、私が教師をすることになりました。人に教えるには自分がしっかり理解しなくては…
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週刊エコノミスト
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