自己形成にも通じる子育て本とキリシタン弾圧を描いた新作小説 孫崎享
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私は本は書店でパラパラとページをめくり、引かれた記述があれば購入する。星友啓著『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(SB新書、990円)もこうした形で買った。
最初のほうで「子どもがカッとなりやすい脳科学的な理由」という項目があり、解決策として、「コネクト&リダイレクト」が紹介されている。どういうことかというと「子どもの感情が昂(たかぶ)っているとき、まずは『コネクト』、つまり子どもの心とつながることから始めます」との説明がある。そして子どもが落ち着いてきたら「リダイレクト」、つまりあらためて子どもの気持ちに「向き直す」ことが説かれている。これは部下を持った時の上司の心構えではないか。
この本は確かに子どもを育てる親向けに書かれている。しかしその助言は指導的立場に立つ人への助言としても極めて有用な本である。それだけではない。一個人の生き方としても助言になる。
著者は「『やる気』には2種類ある」として、「『内発的やる気』とは、何かをやること自体に動機づけられている状態のことです。(中略)それに対して、『外発的やる気』は、何かをやることから発生する報酬や罰などによる動機づけのことです」と述べ、「外発的やる気は内発的やる気を壊してしまう」と警告している。
本書は子どもへの教育に限らず、組織での生き方、さらには自己育成に極めて有益な本だと思う。
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キリスト教弾圧は日本の歴史の中で最大の暗黒であろう。斬首と火あぶり、はりつけ、水責めなどで殺害し、棄教を求めて拷問する。この悲劇を前に、多くの作家がこの問題に取り組んできた。遠藤周作著『沈黙』がその代表的作品であろう。そして直木賞受賞作『熱源』の著者、川越宗一氏が取り組み、『パシヨン』(PHP研究所、2420円)を出した。
川越氏は『熱源』について、「歴史は個々人が自分の都合で頑張ったり、くじけたりしてるもののランダムな集積」「僕らがのうのうと暮らしてるから、少数派の人の苦難に思いが至らない、やさしくない社会が出来上がっていくんじゃないか、という気がします」と述べているが(ウェブサイト「好書好日」インタビュー)、今回の作品においてもこの姿勢が貫かれている。
今作の主人公は「最後の日本人司祭」の小西マンショである。母・小西マリヤはキリシタン大名で知られる小西行長の娘で、行長が…
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週刊エコノミスト
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