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週刊エコノミスト Online 書評

出版社との直取引で利益率アップを目指す新書店 紀伊國屋書店主導で誕生 永江朗

 紀伊國屋書店とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、日本出版販売(日販)による株式会社ブックセラーズ&カンパニー(以下、B&C)が10月2日に設立された。出資比率は紀伊國屋書店が40%、CCCと日販がそれぞれ30%。代表取締役会長には紀伊國屋書店の高井昌史代表取締役会長兼社長が、代表取締役社長には紀伊國屋書店の宮城剛高経営戦略室長が就いた。CCCからは内沢信介事業戦略室長が、日販からは日野泰憲マーケティング本部長が、それぞれ取締役に就いた。出資比率や役員構成から、紀伊國屋書店の強い意志を感じる。

 B&Cは取次が主軸を担っていたこれまでの出版流通を根本からひっくり返す。重視するのは書店と出版社の直(じか)取引だ。現状では取次が書店の規模や立地、実績などに応じて配本数(仕入れ数)を決めることが多いが、B&Cは書店と出版社が直接交渉して仕入れ数を決める。これによって書店は利益率が上がり、出版社は返品率の低減を期待できる。また、書店は「売りたい本が入荷しない」という悩みから解放される。

 ただし、もくろみ通りにいくか否かは、どれだけの出版社が直取引に応じるかどうかにかかっているし、出版社が直取引をするかどうかは、B&Cが返品減と販売増を同時に実現できるか否かによるだろう。

 紀伊國屋書店には洋書販売の実績がある。新宿に国内最大級の洋書専門店をかまえ、全国の大学図書館や研究室とも取引がある。洋書には定価販売(再販制)がないし、原則買い切り。日本では1冊仕入れても100冊仕入れてもマージン率は同じだが、洋書は仕入れ部数に応じてディスカウントされる。状況に応じて販売価格を変えたり、不良在庫をバーゲン処分するなどのノウハウが紀伊國屋書店にはある。

 紀伊國屋書店とCCC以外からもB&Cのシステムに参加する書店が増えると、書店界は二極化していく可能性がある。ひとつは出版社と直取引して低い返品率と高い利益率で経営していく書店であり、もうひとつは取次による見計らい配本によって、利益率は低いが不良在庫を抱えるリスクのない書店である。どちらが持続可能だろうか。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2023年10月31日号掲載

永江朗の出版業界事情 書店と出版社の直取引主眼に新会社設立

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