半導体市況が左右する景気回復の行方 藤代宏一
8月の鉱工業生産指数の速報値は前月比で横ばいとなり、日本の景気は2022年以降、良くも悪くも一進一退となっている。期待外れに終わるであろう中国経済、金融引き締めに苦しむ欧米経済が重荷となり、半導体市況の悪化も生産活動を抑制している。一方で、サプライチェーンの復旧に伴う自動車生産の回復が関連業種に波及して、経済全体を下支えしている。
先行きはどうであろうか。経済産業省が9月初旬に実施した製造工業生産予測調査の結果によると、製造工業の生産計画は9月が前月比5.8%増、10月が3.8%増と強気な数字が示された。
次に、半導体市況の影響を受けやすい電子部品・デバイス工業の生産を見ると、8月は前月比0.5%増、前年比ではまだ8.1%減だが、マイナス幅は縮小した。ノートパソコンやスマートフォンなどの需要減衰を背景とするシリコンサイクルの悪化はなお継続しているものの、在庫調整の進展もあり生産には底打ち感が見られる。生産計画は9月が2.2%減と減産だが、10月は11.2%増と、ならしてみれば増産傾向だ。
出荷・在庫バランス改善
生産の先行きを予測できる出荷と在庫の動向に注目すると、8月は出荷のマイナス幅が前年比で7・0%減に縮小すると同時に、在庫は1.3%減とマイナス圏に転じた。両者の前年比伸び率の…
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週刊エコノミスト
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