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高所得者ほど恩恵が大きい物価抑制策としての補助金政策 斎藤太郎

 円安、原油高が再び進んでいることを受けて、政府は2023年9月までとしていた激変緩和措置(電気代、都市ガス代、ガソリン、灯油等の価格抑制策)を年末まで延長することを決定した。補助金を使った政府の対策は、物価高による家計の負担を和らげる効果がある一方で、さまざまな問題がある。

 例として、電力・ガス会社、石油元売り会社には補助金が出されるのに、同様にコスト増の影響を受けている食品会社には補助金が出ないなど特定産業だけが救済されるという不公平が生じる▽やめるタイミングが難しい▽市場価格がゆがめられる▽財政負担が膨らむ──などが挙げられる。

 家計の立場から考えると、特定の品目に対して補助金を投入すると、それを使う人と使わない人の間に不公平が生じる。たとえば、日常的に自動車に乗っている人はガソリン使用量が多いため、補助金による負担軽減額が大きくなるが、自動車を使わない人にとってはまったく恩恵がない。

 補助金は政府部門から民間部門への所得移転を意味するが、その所得を稼ぐのは最終的には民間部門である。したがって、ある品目を対象にした補助金政策は、それを使用していない人から使用している人への所得移転をもたらしているにすぎないという見方もできる。

所得階級別の負担軽減額

 エネルギー関連支出をしている世…

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週刊エコノミスト

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