植田日銀流コミュニケーションの課題 愛宕伸康
日銀の植田和男総裁が就任して約5カ月。サプライズで政策変更することが多かった黒田東彦前総裁に比べ、市場とのコミュニケーションに明確な変化がうかがわれる。
就任後初めてとなる4月の金融政策決定会合後の記者会見で、植田総裁は「政策の効果と副作用のバランスは間違えないように常に注意深く分析し、できる限り情報発信をしていきたい」と述べ、情報発信の重要性を示した。
実際、日銀は7月の決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の政策修正を行ったが、その3週間ほど前、内田真一副総裁は日本経済新聞のインタビューに答え、YCCの副作用について「市場機能に影響を与えていることは強く認識している」と懸念を強調した。総裁や副総裁の講演や記者会見では、「強く」といった刺激的な言葉は市場に思惑を呼びやすいため使わないのが普通だ。それをあえて使うことで、市場に7月の政策修正を織り込ませようとした可能性が高い。
こうしたコミュニケーションは、この時が初めてではない(表、拡大はこちら)。
例えば、4月の決定会合で宣言した「多角的レビュー」の実施だ。その2週間ほど前に行われた植田総裁の就任記者会見で、総裁は非伝統的金融政策を総合的に検証(レビュー)することに前向きな発言をしている。
より直接的なのは内田副総裁…
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週刊エコノミスト
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