ガーミン スイスのGPS機器メーカー 清水憲人
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Garmin スマートウオッチで業績回復/94
ガーミンはスイスに本社がある全地球測位システム(GPS)を活用した電子機器メーカーだ。現会長で台湾出身のミン・カオ(高民環)氏と電気機械技師のゲイリー・バレル(故人)が1989年、米カンザス州で創業した。
カーナビで急成長
GPSとは人工衛星が発する電波を受信した機器の正確な位置を把握するシステム。米国防総省の資料によれば、同省は73年、軍用通信に使うため開発に着手し、人工衛星を軌道に乗せ続けた。米レーガン政権は83年、民間に開放すると決めたが、当初は国防上の配慮から位置情報の精度を下げる「選択利用性」という操作を加えていた。
そのためガーミンが初期に開発した製品は位置情報に誤差があっても影響が少ない船舶や航空機向けだった。2000年、クリントン政権が選択利用性の解除を決めると、より高い精度の位置情報を必要とするカーナビゲーション製品に注力することとなった。00年代初頭には、ダッシュボードに後付けするカーナビのメーカーとして米国を中心に市場を席巻して急成長。株価も好調だった。
しかし07年、米アップルがスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を発売すると、カーナビの需要が減少。さらに09年、米金融大手リーマン・ブラザーズの経営破綻を契機に世界的に景気が悪化したことで、ガーミンは減収に転じ、13年ごろまで業績が低迷した。市場環境の変化を受け、カーナビ以外の製品の開発を急ぎ、多様な新製品を市場に投入。14年ごろから再び成長軌道に乗った。
製品セグメントは五つある。
一つ目は、22年12月期売上高の31%を占め、セグメント別で最多の「アウトドア」。野外活動に適した耐久力の高いスマートウオッチ(時計型端末)や、登山家向けに現在位置、標高、気圧を表示し、携帯電話の電波が届かない場所でも衛星通信できる端末などがある。
二つ目は、売上高構成比23%の「フィットネス」。心拍数センサーなどを搭載したランナー向けの時計や、練習効果を高める機能があるサイクリング用コンピューターなどがある。
三つ目は、19%の「マリン」。自船の位置や方位などを示す「チャートプロッター」という電子機器、魚群探知機、自動操舵装置などの製品からなる。
四つ目は、16%の「航空」。飛行航法計器などからなる。
五つ目は、11%の「オート」。カーナビや車載カメラなど自動車やバイク向けの製品群。かつては売上高の7割以上を稼ぐ主力事業だったが、近年は比率が低下した。
売上高の地域別構成比は米州50%、欧州・中東・アフリカ34%、アジア太平洋16%だった。
営業利益率2…
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週刊エコノミスト
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