オルガノン 婦人科系の米国医薬品会社 長谷川祐子
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Organon 日本では不妊治療薬と経口避妊薬の需要拡大に期待/95
米製薬大手メルクが2021年6月、婦人科系の医薬品事業などを分社化して設立したのが米オルガノンだ。同時に米ニューヨーク証券取引所に上場した。
売上高の8割は米国外
取り扱う製品には不妊治療薬「ガニレスト」、経口避妊剤「マーベロン」、骨粗しょう症治療薬「フォサマック」など60種を超え、140カ国・地域以上で販売している。22年度売上高約62億ドル(約9199億円)のうち、77%が米国外での売り上げだ。日本にも東京都港区に同名の現地法人があり、医薬品を卸売りしている。
不妊治療事業の23年4~6月期売上高は前年同期比17%増(為替変動の影響を除く調整値)と好調だった。主な理由は、当局が新型コロナウイルスに関連する規制を緩和して患者がクリニックに戻った中国、需要が旺盛だったLAMERA(中南米、中東、ロシア、アフリカ)、それに米国の販売増だ。同事業の売上高に占める米中の比率は50%を超えるという。ケビン・アリ最高経営責任者(CEO)は8月8日の4~6月期決算発表会で「年末までの期間中、中国での不妊治療事業について非常に明るい見通しを描いている」と述べた。不妊治療市場は米国でも成長しているとし、魅力的な事業とみなしている。
日本では不妊治療の一部が22年4月から公的健康保険の適用を受けるようになった。菅義偉前首相が20年に就任した際に公約した政策だ。以前から不妊の原因が分かっている人への治療は保険適用だったが、新たに原因不明の不妊や治療が奏功しない人への治療も保険適用になった。治療を受ける人にとっては負担額が減り、治療薬の販売には追い風だ。同社の日本法人は世論調査の結果を発表するなどして周知に努めている。
日本法人は今年6月、20代、30代を中心とした社会人が不妊治療について話し合うイベントを東京都内で開いた。同社の発表によれば「不妊治療も他の事情もタブー視せずに会話できることが大切」といった話があったという。世界各地の不妊治療の関連団体は6月を「世界不妊啓発月間」として、意識を高める活動をしており、同社はそれに合わせてイベントを開いた。
米国でバイオシミラーを市場投入
経口避妊剤(ピル)も日本で需要拡大が見込める製品だ。国連経済社会局が19年に公表した避妊法に関する国際調査の結果によれば、15~49歳女性のうち、経口避妊剤の推定普及率はフランス33.1%▽ドイツ31.7%▽英国26.1%▽カナダ28.5%▽イタリア19.1%▽米国13.7%▽日本2.9%──と、主要7カ国の中で日本の数値は極端に低かった…
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週刊エコノミスト
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