商湯集団 顔認証技術に強い中国企業 富岡浩司
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SenseTime Group 赤字が続き業績は低迷/96
商湯集団(センスタイム・グループ)は画像認証技術や人工知能(AI)に強い中国のソフトウエア大手だ(登記上の本社は英領ケイマン諸島)。
現・執行董事で香港中文大学教授の湯暁鷗氏や現・最高経営責任者で1981年生まれの徐立氏らは2014年6月、「ディープID2」という顔認識ソフトウエアを開発した。カメラが撮影した人の画像からその人の氏名などの個人情報を正しく結びつけた確率が99.15%に達したという。湯氏らは同年10月、商湯集団を創業した。
同社資料によれば、16年にはスマートフォン450万台超に同社のアプリ200種が搭載され、17年には人口1000万人を超す11市が同社の「都市管理」システムを使うようになったという。同年にはホンダの研究開発子会社、本田技術研究所と自動運転に関する共同研究開発契約を締結した。
米商務省が禁輸措置
気になる点もある。米商務省は19年、商湯集団など中国企業8社を禁輸措置の対象とする「エンティティーリスト」に加えた。8社の製品を中国当局が使い、ウイグル族の人権侵害に用いたという嫌疑だ。
その後の21年12月、香港証券取引所に上場した。上場直後の株価3.75香港ドル(約71円)から数日で3倍近い9.7香港ドル(約184円)まで急騰する場面があった。
事業セグメントは四つある。
一つ目は「企業サービス知能化(スマートビジネス)」。事業所の入退室管理システム、仮想現実空間で小売店を再現するシステム、工場の品質管理システムなどだ。
二つ目は「都市管理知能化(スマートシティー)」。道路の通行車両データをリアルタイムで集約して渋滞を緩和するシステムや、治安当局向けに事案発生の予測をするシステムなどがある。
三つ目が「個人生活知能化(スマートライフ)」。スマホの画像修正アプリや動画編集ソフトなどだ。
四つ目は「自動車知能化(スマートオート)」。運転手が眠気を催しているかどうかを感知するシステムや、歩行者など自車の周囲をカメラで把握して運転を制御する先進運転支援システムなどだ。
業績は低迷している。19年度以降、最終黒字を一度も達成できておらず、22年度売上高は前期比19%減の38億元(約762億円)、純損益は60億元(約1209億円)の赤字だった。スマートシティーは前年度比48.8%減、スマートビジネスは25.2%減と落ち込みが大きかった。決算資料では中国当局が新型コロナウイルス対策で厳しい行動制限を強いた「ゼロコロナ政策」の影響を挙げている。
しかし、同政策が終了した後の23年1~6月期も回復…
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週刊エコノミスト
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