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教養・歴史 書評

「つまづいても立ち上がる勇気の共有こそが“寄り添い”」という言葉が響いた 高部知子

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 人の気持ちを理解するのは難しい。大人になるにつれて「わかる」ようになるのかと思っていたけど、ますます「難しい」ということだけが理解できるようになる。特に愛する人に障害があって、何を考えているのか理解したいのにできないもどかしさに直面した時には、当事者の言葉を聞くと心に響くことがある。

 やっと秋の気配を感じられるようになった夜のお供に、今回私が選んだ本は『ADHDの僕がグループホームを作ったら、モヤモヤに包まれた 障害者×支援=福祉??』(山口政佳著、ゲスト/田中康雄、明石書店、1760円)。この本はADHD(注意欠陥多動性障害)の当事者が、自分が住みたいと思える障害者の居場所を作りたい、という思いからグループホームを立ち上げるなか、湧き上がった疑問や問題点を主治医と対話するという形式になっている。

 テーマは「障害者が社会の一員として生きていくありよう」「失敗やつまずきだって、その人のもの」「自分が幸せになるためには、身近な他者も幸せである必要がある」の三つに分かれ、当事者と主治医がお互いにそれぞれの意見を述べ、対話が進んでいく。

 私は普段、精神科で仕事をしている立場上、発達障害を抱える方の話を聞く機会が多い。最近では子供だけでなく、いわゆる「大人の発達障害」と呼ばれる方も多く来院する。こうした時、お母さんが付き添いで来られることも多く、愛する我が子を理解できない辛さを垣間見る。

 例えば「周囲の人たちが、当事者の思いを『代弁』と言いながら『変換』しちゃってないかなあ」と著者はいう。なんと親にとって耳の痛い言葉だろう。また「寄り添う」というけれど、「ただその場が丸く収まる『寄り添い』」「なんとなくやり過ごす『寄り添い』」ではなく「時に葛藤や苦痛を共にするような『寄り添い』」こそが本当の寄り添いではないか?と著者が疑問を投げかける。すると主治医は「寄り添いは、“躓(つま…

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