迷ったら「緊張するほうを選べ」 不祥事から信頼を回復する経営哲学 北條一浩・編集部
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『天日干し経営』
著者 村井満さん(日本バドミントン協会会長)
不祥事が起きた時、リーダーはどうあるべきか。本書を読んで驚かされるのは、その対応の速さだ。
「スピードは本気度の代替変数です。経営者は今、何が最も大事かを常に自問自答し、重要と判断した事柄にスピードアップを図ります」
日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)に入社以来、リクルートの各部門を歩んだ著者は2014年、Jリーグの第5代チェアマンに抜てきされる。就任から2カ月弱で、サポーターから試合中に差別的横断幕が掲出される問題が発生すると、ホームの浦和レッズにJリーグ史上初の1試合の無観客試合の制裁を下し、存在感を示す。以降、次々にJリーグのデジタル改革や組織変革を実行するが、画期的なのはインターネットテレビDAZNとの10年2100億円契約だ。そしてこれが大失態で幕を開ける。
「当時は欧州でも衛星放送やケーブルテレビが主流で、そこにJリーグがDAZNと契約して全試合ネット配信に切り替えようというのですから注目されました。そして最初の試合、17年2月26日のガンバ大阪vs.ヴァンフォーレ甲府戦の中継は、画面にクルクル渦巻きができるだけで、一切試合が映らない大惨事でした」
村井さんはすぐにDAZNのCEO・ラシュトン氏と記者会見を開く。
「私には、迷った時には、緊張するほうを選ぶという信念があります。会見前に、どうやらロンドンのクラウド上のサーバーにトラブルがあったらしいことがわかりました。それをまず伝えようと。今どこまでわかっていて、どこからがわからないのかをすべてオープンにしました」
このすべてを明らかにし、開示するのが著者の思想である「天日干し経営」だ。万物が陽光にさらされて浄化され、再生されるように、隠さずすべて明らかにし、誠実にわびて、その後に入念に調査を進める。
「天日干しをすると、知見のある人からア…
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週刊エコノミスト
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