下院議長選で迷走の共和党は選挙に向けた求心力を取り戻せるか 吉村亮太
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下院共和党の迷走がようやく収まった。当時の状況は、かじの壊れた船にもしばしば例えられた。共和党議員8人に民主党議員208人が加わり、下院議長に対する解任動議を史上初めて可決したことでパンドラの箱を開けてしまった。4回目の投票で、共和党のマイク・ジョンソン党下院議員総会副議長が議長に選出されたが、その過程の議員総会は、ののしり合いにまで発展していたというから驚く。
今会期の冒頭、議長の選出に15回の投票を要した段階で伏線は張られていたといえる。混乱の責任は多数党でありながら決められない共和党にあるというトーンで報じられることが多いが、新年度予算もまだ成立していない段階で、党利党略で解任劇に加担した民主党にも責任の一端はあると考えるのがフェアだと思う。
日本のメディアが衆院議長の選定について大きく扱うことはまずない。しかし、下院議長選びのゴタゴタを米国メディアは連日トップニュースで扱っていた。衆院議長が事実上の名誉職であるのに対し、下院議長の権限は名実ともに強大だからだ。下院における議事進行を統括し、法案の生殺与奪の権を握っている。何らかの理由により大統領が職務を執行できなくなった場合、副大統領の次の継承順位を持つことからも、地位の高さをうかがい知ることができる。
欠けた求心力
トランプ氏が政治の舞台に登場してからとりわけ傾向が顕著になっているが、近年、共和党内は右派の発言力が高まり、穏健派は、けおされっぱなしだった。長いものに巻かれる形で仕方なく党内がまとまっていたといっても過言ではない。下院共和党が分裂状態に陥った理由はいくつか考えられるが、一部の右派の振る舞いに穏健派の堪忍袋の緒が切れたというのが第一であろう。自分たちの意見が通らないと政府閉鎖をちらつかせ、同僚も後ろから刺すのだから、嫌われるのは覚悟の上か。
このまま予備選が進めば、トランプ氏が共和党候補としての指名を獲…
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週刊エコノミスト
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