観光客で沸く海南島の空き室が目立つマンションにみる中国経済の明暗 久保和貴
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中国では9月末から10月初旬にかけて中秋節、国慶節(建国記念日)の大型連休があり、筆者は連休中、上海市内と、「中国のハワイ」とも呼ばれる海南島(海南省)を訪れた。中国当局によると、大型連休中の国内旅行者数は前年同期比71.3%増の8.26億人、観光収入は同2.3倍の7534億元(約15兆4300億円)で、いずれも新型コロナ前(2019年)の同期をそれぞれ4.1%、1.5%上回ったという。数字を裏付けるように、海南島も国外から多くの観光客が訪れていた。
海南島はリゾート地のため、富裕層の観光客が多いようだった。ハワイとほぼ同じ緯度の海は青く澄み、若者たちがヨットやジェットスキーを楽しんでいた。ガイドブック推奨のレストランでは「ロブスター1匹600元(約1万2300円)」といった強気な値段設定も散見され、中国の消費パワーを肌で感じた。
リゾートマンションも多く、海岸沿いの景色が良い場所にはホテルやマンションが林立していた。中には恒大集団や碧桂園といった足元で債務問題を起こしている不動産業者が手掛けるプロジェクトも多い。夜になり近くを通ると、部屋の明かりもまばらなマンション群が闇夜の中に浮かび上がる。「実需が伴っていないのではないか」と思った。
8月末以降、中国政府は不動産緩和策を順次打ち出している。特に、不動産購入時の頭金比率の引き下げはその効果が期待されていたものの、状況は必ずしも芳しくはないようだ。9月の不動産販売データを見ても、回復の勢いは感じられなかった。中国経済のアキレスけんである不動産問題は容易には解決しないとみられる。
一方で、新産業の育成は進んでいるようにみえる。海南省では23年の新車販売のうち、6カ月連続で新エネルギー車の比率が50%を超えており、確かに街中で見かける車の半分は新エネ車に置き換わっているようだ。同省は30年までにガソリン車販売を禁止するなど、…
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週刊エコノミスト
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