強気企業スタバから学ぶ中国市場との向き合い方 岸田英明
中国経済は「5%前後」という2023年の成長目標(対前年比実質GDP成長率)のペースを維持しているが、住宅不振の長期化などを理由に、投資家らは景気失速への警戒を強めている。実際に国際収支統計上は資金流出の動きも確認できる。1〜6月の中国の直接投資は634億ドルの純流出で、つまり対内直接投資(海外から中国への投資)が対外直接投資を大きく下回った。前年同期は733億ドルの純流入だった。
一方で、米国企業団体の上海米国商会が9月に発表した会員企業向けアンケートの結果を見ると、今後5年間の中国事業見通しを楽観する企業が、前年調査比で微減したものの、52%でなお5割を超え、投資拡大の意向を持つ企業は25%から31%へと増加している。少なくとも米国企業の間では「事業の中国離れ」がただちに広がることはなそうだ。
テスラやスターバックスなど一部の米国企業は「中国離れ」どころか、強気の姿勢だ。スターバックスは現在、中国250都市で約6500店舗を直営展開する。19年末時点では4123店舗で、コロナ禍でも急拡大した。ナラシムハンCEOは9月、中国メディアに「(我々の)中国経営戦略は不変だ」と語った。25年に300都市で9000店舗を展開し、22年比で売り上げ倍増、営業利益4倍という従来の目標を維持するという。
スターバックス中国のカフェラテはトールサイズが1杯32元(約660円)で、日本(490円)や米国(約440円)より高い。こうした価格設定でも急成長するのは、同社が都市化や中間層拡大の波をうまく捉えた結果だ。ナラシムハンCEOは「(年間の)1人当たりコーヒー消費量は日本の200杯と比べ、中国は12杯に過ぎない」と、のびしろを強調する。中国では22年をピークに人口減少が始まったが、都市人口は30年代にかけてなお拡大が続く。
興味深いのは米中関係が悪化する中でも、同社が中国で大規模なボイコッ…
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週刊エコノミスト
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