市況悪化のNANDフラッシュメモリー 活路見えないキオクシア 津村明宏
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キオクシアとウエスタン・デジタルが経営統合交渉。その背景にはNANDフラッシュメモリー市場の苦況がある。
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NANDフラッシュメモリー(書き換え可能で電源を切ってもデータが残るメモリー)は、半導体市場の20%以上を占めるメモリー市場でDRAM(一時記憶用半導体)と双璧をなす主要デバイスだ。電源を切っても保存データが消えない不揮発性を生かして、USBメモリーやSDカード、スマートフォンの内蔵メモリーやパソコンの主記憶装置となったソリッドステートドライブ(SSD)、データセンターにおけるストレージなどに多用され、約600億ドル(約9兆円、2022年ベース)の市場規模を形成している。
近年はメモリーセルを立体的に積層する3D-NANDが主流となり、1チップ当たりの記憶容量を増大させる技術が参入各社の競争軸となっている。大手の一角である韓国SKハイニックスは23年8月、セルを321層も積層した容量1テラビットの3D-NANDを開発し(写真)、25年前半からの量産を目指す計画を明らかにしている。
需要低迷で減産
メモリー市場は、世界経済の低迷に伴って22年下期から供給過剰が顕在化し、参入各社はウエハーの投入量を抑制する減産措置を講じてきた。新型コロナウイルス禍で大きく伸びたパソコンやスマホ、データセンター向けのストレージ需要に反動減があったことに加え、ロシア・ウクライナ問題に端を発するエネルギーコストの上昇、中国の経済低迷などが長引き、在庫過剰に陥ったためだ。
足元を見ると、DRAMとNANDでは市場が非常に対照的な様相を呈している。DRAMは、データセンター事業者が生成AI(人工知能)の運用に不可欠なGPU(画像処理回路)やDRAMを積層したHBM(High Bandwidth Memory、高帯域幅メモリー)の調達を活発化し始めたことに伴い、需要回復に向けて動き出し、一部のメモリーメーカーは23年10~12月期にも黒字化するのではないかとの予測さえ出てきた。
しかしNANDを中心とするストレージ分野は、スマホやパソコンの販売不振と在庫解消が想定より長引いており、端末1台当たりのメモリー搭載容量が増えていないこともあって、回復の糸口をいまだ見いだせていない。つまるところNANDメーカー各社は、生産量をできる限り抑制しながら在庫の削…
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週刊エコノミスト
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