国際競争が激化するパワー半導体 経産省がローム・東芝連合を支援 津村明宏
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世界的な需要拡大を受け、パワー半導体は国際的な製造競争が激化している。
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経済産業省は2023年12月8日、「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画」(供給確保計画)の認定先として、パワー半導体の製造連携と増産投資計画を共同で申請していたロームと東芝デバイス&ストレージ(東芝D&S)を選定した。ロームがSiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)パワー半導体、東芝D&SがSi(シリコン)パワー半導体への投資を重点的に行うことで効率的に供給力を拡大するとともに、それを相互に活用して連携を深め、互いにパワー半導体事業の国際競争力を高めていく考えだ。
計画では、現在両社が個別に実施しているパワー半導体関連の事業費3883億円(うちローム2892億円、東芝D&S991億円)に対して最大助成金額1294億円が見込まれている。具体的な案件は、ローム子会社のラピスセミコンダクタが整備を進める宮崎第2工場(宮崎県国富町)と、東芝D&S傘下の加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)で実施しているSi300ミリメートル工場の新棟が対象となる。宮崎第2工場ではSiC200ミリメートル工場ならびにSiCウエハーに向けた投資が実施されている。
経産省の資料によると、ラピスセミコンダクタ宮崎第2工場におけるSiCパワー半導体の供給開始時期は26年4月で年産能力は72万枚(200ミリメートルウエハー換算)、SiCウエハーの供給開始時期は25年1月で年産能力は70.8万枚(200ミリメートルウエハー換算)。加賀東芝エレクトロニクスにおける新棟での供給開始時期は25年3月で年産能力は42万枚(300ミリメートルウエハー換算)である。
経産省は本件の支援対象として「SiCパワー半導体を中心に、原則として2000億円以上」の投資を行う1件のみを選定することを公言していた。また、単独よりも複数社で連携した申請を期待し、その背景として、海外に比べて参入企業数が多い国内パワー半導体メーカーの再編を促そうとしているとみる向きもあった。
海外大手の大型投資
海外の大手パワー半導体メーカーの投資計画は桁違いだ。世界最大手の独インフィニオンは23年9月期に30億ユーロ、24年9月期は33億ユーロの設備投資を実行し、パワー半導体の大増産を推進中。マレーシアのクリム工場で新棟「第3モジュール」を24年後半から稼働させるほか、最大50億ユーロを追加投資して200ミリメートルウエハー対応のSiCパワー半導体の新棟を建設して27年夏に稼働させることも計画している。Siパワー半導体については独ドレスデン、オーストリアのフィラッハに300ミリメートル工場をすでに稼働させている。
また、米ウルフスピードは、24年6月期に20億ドルの設備投資を計画。世界で初めて200ミリメートルのSiCウエハーを採用したパワー半導体工場「モホークバレー」をニューヨーク州で稼働させたほか、ノースカロライナ州では200ミリメートルのSiCウエハーを大量生産する「サイラーシティー The JP」工場…
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週刊エコノミスト
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