ジェイビル 電子機器の受託製造で世界3位 児玉万里子
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Jabil 年商3.7%増5兆円 御殿場にも半導体組み立て拠点/98
ジェイビルは電子機器の受託製造サービス(EMS)の米大手だ。EMSの22年売上高としては、ジェイビルは台湾・鴻海精密工業、同・和碩聯合科技(ペガトロン)に次ぐ世界3位だった。
自宅台所からスタート
ジェイビルの起源は1966年、建設業者のウィリアム・モリエン氏がミシガン州にあった自宅の台所で友人と始めたビジネスだ。汎用(はんよう)コンピューター用のプリント基板を修理する商売だったという。22歳だったモリエン氏の息子、ビル・モリエン氏が77年、経営を引き継ぎ、米自動車大手ゼネラル・モーターズなどの新顧客を開拓して回路基板の量産を始めた。米IBMのパソコン部門の仕事を請け負うことになった82年、本社をIBMの工場に近いフロリダ州に移した。
当時、パソコンなどのメーカーが製造過程の一部を外部委託する動きが活発化していた。幅広い企業から製造を請け負う業者はEMSと呼ばれるようになり、ジェイビルはその先駆けの一社だった。
92年に英国に拠点を設け、翌年には米ナスダック証券取引所に上場。その後もマレーシアに工場を新設し、香港や台湾の同業他社を買収した。
今年8月末現在、事業拠点は世界30カ国以上に上り、従業員23万6000人の71%がアジアで勤務する。日本では静岡県御殿場市に半導体の組み立てなどをする拠点がある。2023年8月期の国別売上高は多い順にシンガポール、メキシコ、中国で、米国は14%にとどまった。
台湾EMSが台頭
事業セグメントはEMSと電子機器以外を受託製造するDMSの二つがある。
EMSの主な顧客は第5世代(5G)移動通信システム、クラウドコンピューティング、デジタル印刷、小売り、ネットワーク機器などの関連業者。
一方、DMSは自動車、運輸、ヘルスケア、包装などの関連業者だ。過去10年間の売上高はDMSの伸びが大きく、20年以降は両者の売上高はほぼ半々になっている。
かつてEMS業界は米企業が中心だったが、00年代初頭からは鴻海精密工業をはじめとする台湾企業が台頭した。
ジェイビルの売上高は93~02年度は年平均30%増の急成長だったが、03~12年度は同15%増、13~22年度は同7%増に鈍化した。EMS間の競争激化が一因だろう。ただ、EMSの売上高で世界上位5社では直近10年間の成長率はジェイビルが最も高い。
23年8月期売上高は前期比3.7%増の347億ドル(約5.2兆円)だった。米電機大手の22年度売上高はIBMとHPがそれぞれ600億ドル(約9兆円)台であることを考えると、ジェイビル…
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週刊エコノミスト
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