マテル バービーからハリウッドへ 岩田太郎
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Mattel 人形など米玩具大手/99
米玩具大手マテルは2022年度の売上高がデンマークのレゴ、バンダイナムコホールディングス(HD)、米ハズブロに次ぐ同業界世界4位だ。
1945年、兵役中だったエリオット・ハンドラー氏、妻のルース氏、友人のハロルド・マットソン氏の3人が、米ロサンゼルスで額縁を製造・販売する商売を始めたのが起源だ。47年、子ども向けのウクレレが初のヒット製品となった。
同社の成功を決定づけたのは、59年に発売した着せ替え人形「バービー」。ルース氏が着せ替え人形を好んだ娘をヒントに発案した。張り出したバストと細いウエストという大人びた体形の人形は当時としては異色だったが、最初の1年で約30万個も売れたという。同社はウェブサイトで「バービーは自立し、力強い新たな女性像を象徴している」とし、宇宙飛行士や大統領候補の衣装も用意した。
映画ヒットで業績好調
バービーの成功を受けて同社は63年、米ニューヨーク証券取引所に上場(現在は米ナスダック証取に上場)。その後も、68年に発売したミニカー「ホットウィール」などさまざまな玩具を投入したが、ハンドラー夫妻は決算を粉飾した責任を取って75年に会社を追われた。92年にはカードゲーム「ウノ」のメーカーを買収した。
今年7月には実写版の米映画「バービー」が米国で封切られ、11月下旬までの世界興行収入が14億ドル(約2072億円)を超す大ヒットとなった。2023年7~9月期売上高は前年同期比9.3%増の19億1880万ドル(約2840億円)で、市場予想の18億4000万ドル(約2723億円)を上回った。また、1株当たり利益も市場予測を大きく上回る1.08ドル(約160円)に増えた。
好業績を支えたのは、バービーをはじめとする人形事業の売上高が、映画の人気を受けて前年同期比27%増えたことだ。「ディズニープリンセス」「アナと雪の女王」の人形も好調だった。また、ホットウィールの車両事業が同18%増だった。23年10~12月期にはさらに多くの新商品を投入する予定だ。同社は23年12月期の売上高が前期の54億3500万ドル(約8044億円)と同等になるという見通しを変えていない。
マテルは創業から80年近く玩具を主力商品として成長してきた。しかし、イノン・クライツ最高経営責任者(CEO)はコンテンツ企業に変革しようとしている。クライツ氏は10月25日の7~9月期決算発表会で、「映画『バービー』が成功したことで、興行収入、映画と関係する玩具、他社との協業の面で多大な貢献があった」と述べた。「マテルをハリウッドの重要プレーヤーに…
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週刊エコノミスト
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