雇用データを見れば米の利上げはもうない 藤代宏一
賃金由来の高インフレに直面してきた米国は、FRB(米連邦準備制度理事会)の果敢な金融引き締めにより、ようやくインフレ沈静化のゴールが見えてきた。
過去数カ月、雇用統計は労働市場が量・質ともに正常化しつつあることを示している。概観すると、雇用者数は緩やかに増加、失業率は小幅に上昇、平均時給は下向きの曲線を描き、労働参加率はならしてみれば上昇傾向を維持している。ソフトランディングを「緩やかな景気減速とインフレ沈静化の同時達成」と定義するならば、それに合致する動きである。
10月の非農業部門雇用者数は前月比15.0万人増で、9月からは減速。求人件数が減少に転じるなど企業の人手不足感が緩和し、雇用は緩やかな減速基調にある。10月の失業率は3.9%と小幅に上昇。景気減速が労働市場に波及し年初の3.4%(1月)から上昇している。
この間、失業者を広義の尺度で捉えて算出する「U6失業率」(フルタイムの職が見つからず、やむなくパートタイム勤務に従事している人を失業者とみなす)は7.2%と年初の6.5%から上昇傾向にあり、これが賃金上昇圧力を抑える一因となっている。
労働市場の厚みを示す労働参加率は62.67%(10月)と9月から小幅に低下(図1)。年代別で見ると、働き盛り世代の25〜54歳(83.…
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週刊エコノミスト
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