日本の潜在成長率は過小評価されている 斎藤太郎
日銀、内閣府が推計する日本の潜在成長率はいずれもゼロ%台半ばとなっているが、以下に述べるような理由で過小評価されている可能性が高い。
潜在成長率は概念的には景気循環に左右されないはずだが、実際には現実の成長率の影響を強く受ける。
潜在成長率は、労働投入量、資本投入量、全要素生産性の上昇率によって決まる。このうち、全要素生産性は一般的に、現実の国内総生産(GDP)から労働投入量、資本投入量を差し引いた残差を平滑化して求められる。このため、現実のGDP成長率が低くなれば、全要素生産性上昇率も低くなり、それに応じて潜在成長率も低くなる。
また、景気悪化時には設備投資の抑制や雇用情勢の悪化によって、資本投入量、労働投入量が減少し、このことも潜在成長率の低下要因となる。
たとえば、日銀の推計では、2019年度の潜在成長率は新型コロナウイルス流行前の19年10月時点では0.7%となっていたが、最新(23年10月時点)の推計では0.2%まで下方修正されている。新型コロナの影響で現実の成長率が大きく落ち込んだことに伴い、全要素生産性上昇率が19年10月時点の0.3%から0.0%へと下方修正されたことがその主因である。
一方、足元の潜在成長率はコロナ禍で0.2%まで落ち込んだものの、その後の経済活…
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週刊エコノミスト
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