教養・歴史書評

自民党優位の現在地“ネオ55年体制”までを分析 井上寿一

 報道各社の世論調査によれば、岸田文雄内閣の支持率は「危険水域」の20%台にまで落ち込んでいる。来年には自民党の総裁選が控えている。岸田内閣は続くのか。境家史郎『戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで』(中公新書、1056円)を読めば、首相が交代することはあるとしても、自民党優位の政治体制に揺るぎはなく、どうやら続きそうだと分かる。

 それにしても、なぜ自民党優位の政治体制は続いているのか。1955年に成立したこの政治体制(55年体制)は、1993年の非自民・連立政権によって、崩壊したのではなかったのか。

 対する今の政治体制を本書は「ネオ55年体制」と呼ぶ。これら二つの政治体制に共通するのは、①保守政党が優位政党である、②与野党第1党がイデオロギー的に分極的な立場を取っている──の2点である。

 他方で大きな違いもある。90年代の政治改革の結果、首相への権力集中度は、55年体制と比較して、「ネオ55年体制」の方が格段に強くなっている。このような大きな違いにもかかわらず、政権交代の可能性の低さでは共通する。

 政権交代が可能になるには、自民党が「優位政党」で、与野党第1党が「イデオロギー的に分極的な立場を取っている」ことに変化が訪れなければならないことになる。自民党の優位性は、北岡伸一『自民党 政権党の38年』(中公文庫、1026円)が示唆するように、派閥構造をベースにした盤石の…

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