台湾総統選まで1カ月 リードする民進党に猛追する国民党 近藤伸二
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2024年1月の台湾総統選で、野党・国民党と民衆党は候補者一本化が決裂した。ただ、国民党は与党を猛追し、民衆党は立法委員(国会議員)選で存在感を示しそうだ。
根強い政権交代への民意
中台関係の行方を左右する台湾総統選(2024年1月13日)が約1カ月後に迫ってきた。与党・民主進歩党(民進党)がリードする中、野党側は候補一本化でいったん合意しながら決裂し、選挙戦は与党優位のまま終盤戦を迎えた。ただ、野党協力破綻について第三勢力の台湾民衆党(民衆党)に対する批判が高まったことで、最大野党・中国国民党(国民党)が勢いづく展開になっており、2大政党対決の様相が強まってきている。
総統選は、台湾の主体性を重視する対中強硬派の民進党が今年4月、頼清徳副総統(同党主席)を公認候補に選出。ともに中国との協調路線を掲げる国民党と民衆党は5月、それぞれ侯友宜・新北市長、柯文哲・前台北市長(民衆党主席)の出馬を決定した。国民党の予備選で敗れたEMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、鴻海精密工業創業者の郭台銘氏も出馬に必要な数の署名を集め、無所属で参戦する構えを見せていた。
3候補が名乗りを上げる野党側は支持が分散し、各種世論調査では、夏以降はおおむね頼氏がトップに立ってきた。危機感を抱いた国民党は共倒れを避けようと民衆党に一本化を呼び掛け、組織力に劣る民衆党が応じる形で10月から調整が進められてきた。
両党は協力態勢を築くことでは一致したものの、肝心の総統候補の決め方では、支持者による予備選実施を求める国民党と世論調査結果を尊重すべきだとする民衆党の意見がかみ合わず、平行線をたどった。
立候補届け出期間は11月20日から24日まで。タイムリミットが近づく中、仲介に乗り出したのが国民党の馬英九前総統だった。侯、柯両候補は11月15日、朱立倫・国民党主席と馬氏を交えて協議し、候補一本化を受け入れる合意書に署名した。
野党候補一本化で泥仕合
合意は、専門家が世論調査の結果を評価し、支持率が高いと判断された方が総統候補となり、他方は副総統候補に回る。誤差の範囲内なら、侯氏が総統候補となる──という内容。総統選で勝利すれば、両党が連立政権を組むことも取り決めた。
ところが、専門家の評価に従って侯氏を総統候補とするよう主張する国民党に対し、柯氏側は誤差の解釈などを巡って反論。23日に両候補、朱…
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週刊エコノミスト
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