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「複合不況」の病理をさぐる 金融自由化の帰結としての調整過程 ② 宮崎義一(1992年5月12日)

ベストセラーになった『複合不況』を著した宮崎義一氏がエコノミストで執筆した「『複合不況』の病理をさぐる」を3回に分けて掲載します。バブル崩壊は単純な景気後退ではなく、金融自由化、経済の国際化の広がりなどさまざまな要因が複雑に絡み合って引き起こされていると説きます。

「複合不況」の病理をさぐる 金融自由化の帰結としての調整過程 ②

宮崎義一 京都大学名誉教授

複合不況へのプロセス

 以上でS-F(「ストック」-「フロー」)複合リセッションのうち、金融自由化の帰結としてのストック調整過程の分析を明らかにした。次は、それらが実質GNP(フロー)の成長にどのように波及するかのメカニズムに関する分析である。

 経済企画庁は今年(1992年)2月19日、1986年12月から始まった景気拡大局面は1991年1月から3月にかけてピークに到達したあと、下降局面に入ったという判断を公表した。

 その結果、今回の景気拡大期間は52カ月にとどまり、“いざなぎ景気”(1965年11月から70年7月までの57カ月)に及ばないことになった。さらに3月19日経済企画庁は、91年第44半期の国民所得統計(速報)によってGNPベースの実質成長率が前期比0.046%のマイナス、年率換算で0.2%のマイナス成長になったことを発表した。これがバブル崩壊の影響であることは明らかであるが、それはどのようなプロセスを経て日本の実体経済に影響を及ぼしていったのであろうか。それを図のように企業部門、銀行部門、そして家計部門に大別して要約しておこう。

企業部門への影響

『日本経済新聞』(1992年2月17日朝刊)は、1992年度の設備投資が6年振りに前年割れに落ち込むという見通しを発表した。従来は根強い合理化投資が大型景気を支えてきた。88年度16.3%増、89年度15.4%増、90年度16.5%増と高水準を続けてきたが、91年度実績は7.2%増にとどまる見込みである。それが、『日本経済新聞』による92年度民間設備投資動向調査(2月1日現在)の中間集計によると、「国内投資額(工事ベース)は91年度実績見込みに比べて4.5%減となり、86年度(前年度比0.3%減)以来のマイナス。電気機器、機械、化学、紙・パルプ、建設の各業種が2ケタの大幅減となるほか、自動車、食品、小売業なども減額する。前年度を上回る業種は造船などわずかにとどまった」。…

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