投資・運用

インタビュー「少なくとも今、新NISAは絶対にやってはいけない」経済アナリスト・森永卓郎氏

 新NISAを使った投資をどう考えるべきか。経済アナリストの森永卓郎氏に聞いた。(聞き手=安藤大介・編集部)

>>特集「とことん得する新NISA」はこちら

── 少額投資非課税制度「新NISA」が2024年にスタートする。

■少なくとも今、新NISAは絶対にやってはいけない。現在の株価はとてつもないバブルの状態だ。ギャンブルとしてやるなら別だが、老後資金や生活費に回すお金でやってはいけない。

── その根拠は?

■現状は1920年代の米国に似ている。当時、米国は家電と自動車のバブルに沸き、圧倒的な競争力を持っていた。繁栄は永遠に続くといわれていたが、29年10月24日の「暗黒の木曜日」に市場開始早々、ゼネラル・モーターズ株に大量の売りが入り、暴落が始まった。アップダウンを繰り返し、底値に達した32年7月にはニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は10分の1になった。

「技術が発達していない昔の話だ」という人もいる。ただ、現在でも同じようなことは起こっている。数年前までロシアやブラジルなどBRICSへの投資が注目され、私の周りにもロシア株投信につぎ込んでいた人がいたが、今の価格は10分の1になっている。世界全体でも、こうしたことが起こる可能性がある。

── バブル崩壊の可能性が高く、投資を考える段階でない、と。

■私自身も何年か前まで、全体として株価は右肩上がりで行くと思っていた。だが(商品の価値は費やされた労働量で決まるという)「労働価値説」で考えれば、お金は裏側で働く人がいるから価値があるわけで、投資をしたからお金が増えるということはない。

 今起きているのは「ドットコムバブル」だ。米アマゾンやマイクロソフトなどのGAFAMが実力以上の株価をつけている。しかし未来永劫(えいごう)、繁栄を続けることはなく、必ず調整が来て元に戻る。

米10年債は利回り年4%

── では、投資はどうすれば?

■株ではなく債券を買えばいい。米国の10年債はだいぶ下がってしまったが、それでも4%程度の利回りがある。24年は円高になるリスクがあるので短期運用はダメで、米国債の20年債や30年債を買うべきだ。ただ、債券そのものは新NISAの対象ではないのだが。

── その他には?

■ギャンブルとしてやるのなら、株価が下げトレンドに入ったら、(日経平均の日々の値動きのマイナス2倍の値動きが期待できる)「日経平均ダブルインバース上場投信」は、短期勝負だが、すごくもうかる可能性がある。バブル崩壊時はパニック状態となり、株価はものすごい勢いで下がるので、そこに乗っかればいい。

 私自身、日経ダブルインバースを購入したが、その後相場が上がり、半額以下になっている。「言った以上、自分も買った」という程度で、資産全体に影響を与えるほど買っていない。参入は、あくまで、皆がパニックを起こし、売りが売りを呼ぶ展開になったらすればいい。私は、早ければ25年にもバブル崩壊が始まると思う。

── では、相場が下落した後なら新NISAに参入できるのか。

■そうだ。ただし、積立投資はすべきでない。「ここは勝てる」という場面で勝負をかけるべきだ。ぼうっとしている人は勝てない。少なくとも、老後資金や将来の支出に備えた貯蓄は、銀行預金や郵便貯金にすべきだ。

(森永卓郎・経済アナリスト)


 ■人物略歴

もりなが・たくろう

 1957年東京都生まれ。80年東京大学経済学部卒業。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)主席研究員などを経て現職。独協大学経済学部教授も務める。


週刊エコノミスト2024年1月9日・16日合併号掲載

新NISA インタビュー 森永卓郎氏 「ドットコムバブル」は崩壊も 新NISA使わず米国債投資を

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