国家財政 成長のみでは財政再建はできない 石弘光(2008年1月8日)
有料記事
日本を代表する財政学者・石弘光一橋大学名誉教授・元学長の寄稿(2008年1月8日号)を再掲載する。
必要なのは歳出削減か増税 成長のみでは財政再建はできない
一橋大学名誉教授・放送大学学長 石 弘光
財政再建論議がやや遠のいた感があるが、実はその緊急性は増すばかりだ。政府税制調査会会長を長く務めた筆者が、日本の財政赤字問題の本質を明らかにする。
福田康夫内閣の発足以来、「ねじれ国会」の下でテロ特措法のみに焦点が当たっている。例年のように、来年度(2008年度)予算編成、税制改正の審議が始まる時期として、国家財政の危機的状況ならびにその再建に対し、特段の関心が払われていない。先進国のなかで最悪となった財政赤字累増の現状に麻痺してしまったのか、福田首相自らも財政再建への強い姿勢がうかがえない。首相の交代は、安倍晋三内閣の空虚な「上げ潮路線」を軌道修正し、消費税率引き上げを含め本格的な財政立て直しに向けての政策を打ち出す機会であったが、やはり政治的リスクを冒したくないのであろう。やや議論が遠のいてしまったのは、残念である。
現在、年金、教育、地方対策・格差、外交など様々な重要な政策が個別に議論されている。しかし諸政策の基盤となる国家財政がしっかりと確立され、安定した財源でそれらを裏付けない限り、将来にわたり十分な政策を構築できるとは思えない。脆弱な国家財政の立て直しこそが急務と言えよう。いつまでも先延ばししてよい政策課題ではない。
先進国中最悪の財政赤字
現在、日本財政がどのような状況にあるかをまず明らかにしておこう。図1に、戦後初めて公債が発行された1965年度以来の国の一般会計における歳…
残り4972文字(全文5672文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める