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落日のロンドン証取 EU離脱も影響 データ事業に活路 木村正人

地盤沈下が続くロンドン証取(2023年8月、ロンドン)(Bloomberg)
地盤沈下が続くロンドン証取(2023年8月、ロンドン)(Bloomberg)

 欧州最大の旅行会社グループTUIは「ロンドン証券取引所(LSE)での上場は最適かつ有利か」との疑問を株主から突き付けられ、独フランクフルト証券取引所への単独上場を検討している。

 欧州連合(EU)離脱による地盤沈下が進むLSEでは、英半導体設計アームの米ナスダック上場をはじめ上場廃止や海外市場での上場を選択する企業が目立つ。

 英紙『ガーディアン』の金融担当ニルス・プラトリー編集長は2023年12月6日付電子版で「LSEはTUIの離脱より大きな問題を抱えている。フランクフルト単独上場には誰も驚かない。英国市場の活気と流動性の低さは解決するのが難しいパズルだ」と指摘している。

「世界最大の鉱業会社BHPビリトン(豪州単独上場へ)、アーム、配管・暖房機器卸売会社ファーガソン(米国で上場)。これは英国市場への新たな鉄ついか」とプラトリー氏は問う。

 TUIはドイツの親会社に合併されて以来、同国に本社を置く。コロナ危機で旅行業が打撃を受けた時もTUIを支えたのはドイツ政府。同社株の4分の3がドイツ国内で保有、登録されている。

 ロンドンとフランクフルトでの二重上場には余分の費用と手間がかかる。そして英国は愚かにもEUから離脱した。LSEでの上場廃止で航空会社の所有権に関するEU規則に合わせるのが容易になる。

「TUIの離脱は大惨事にはならない。しかしLSEには活気や新鮮さ、米国のような流動性がない。株式購入時の0・5%の印紙税(米国ではゼロ)も助けにならない。本当の問題は魅力ある英国の新興企業とそれを支援する英国の資金が少ないことだ」とプラトリー氏は嘆く。

 LSEは23年12月5日に2度の取引停止に見舞われ、1時間以上にわたり株価指数FTSE100やFTSE250にリストアップされた企業の株取引に支障を来した。

 LSEは取引量の減少に悩む。11月にもFTSEラッセルが取引の不具合を起こした。…

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週刊エコノミスト

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