新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

国際・政治 論壇・論調

独政府がEV購入補助金の廃止を1年前倒し 業界は強く批判 熊谷徹

補助金廃止でEV販売は急減速(2023年10月、ドイツ東部マクデブルク) Bloomberg
補助金廃止でEV販売は急減速(2023年10月、ドイツ東部マクデブルク) Bloomberg

 ショルツ独政権は昨年12月、EV(電気自動車)購入補助金の廃止を約1年前倒しした。連邦憲法裁判所が昨年11月、コロナ対策費のうち600億ユーロ(9.6兆円)の国債発行権を、気候保護・エネルギー転換基金に流用したことを違憲とする判決を出し、歳出削減を迫られた。自動車業界は「普及に逆行する」と批判している。

 独日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は12月18日、「連邦憲法裁判所の違憲判決によって、2024年度予算に170億ユーロ(約2兆7200億円)の不足分が生じたので、ショルツ政権は穴埋めのために歳出削減を断行。補助金廃止が約1年早く行われたことは、自動車業界と消費者には打撃」と報じた。FAZによると、価格4万ユーロ(640万円)までのEVは、政府補助金4500ユーロ(72万円)と、メーカーからの補助金2250ユーロ(36万円)が支給されていた。12月18日以降、EVを買う消費者の負担が4500ユーロ増えた。

 政府が準備期間を設けずに廃止を公表したことも反発を買った。例えば、市民が12月17日までにディーラーと購入契約を結んでも、連邦自動車庁への新車登録などの手続きが同18日までに終わらないと、政府補助金を受け取れない。独自動車工業会(VDA)は、「消費者の中には、政府の補助金のために負担が少なくなると思ってEVを買った人もいる。突然の廃止は、市民の政府への信頼を損なう」と指摘した。こうした市民のためにメーカーは「救済措置」を発表。フォルクスワーゲンは、「24年2月末までに登録された新車EVは、顧客が政府から受け取れるはずだった補助金の額を当社が支払う」と発表した。

 自動車製造業中央連合会(ZDK)のヨズヴィヒ会長は、FAZに対して「突然の廃止は市民に大きな損害を与える。少なくとも市民の負担は2億7000万ユーロ(432億円)増える」と指摘。自動車輸入業連合会…

残り674文字(全文1474文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事