独政府がEV購入補助金の廃止を1年前倒し 業界は強く批判 熊谷徹
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ショルツ独政権は昨年12月、EV(電気自動車)購入補助金の廃止を約1年前倒しした。連邦憲法裁判所が昨年11月、コロナ対策費のうち600億ユーロ(9.6兆円)の国債発行権を、気候保護・エネルギー転換基金に流用したことを違憲とする判決を出し、歳出削減を迫られた。自動車業界は「普及に逆行する」と批判している。
独日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は12月18日、「連邦憲法裁判所の違憲判決によって、2024年度予算に170億ユーロ(約2兆7200億円)の不足分が生じたので、ショルツ政権は穴埋めのために歳出削減を断行。補助金廃止が約1年早く行われたことは、自動車業界と消費者には打撃」と報じた。FAZによると、価格4万ユーロ(640万円)までのEVは、政府補助金4500ユーロ(72万円)と、メーカーからの補助金2250ユーロ(36万円)が支給されていた。12月18日以降、EVを買う消費者の負担が4500ユーロ増えた。
政府が準備期間を設けずに廃止を公表したことも反発を買った。例えば、市民が12月17日までにディーラーと購入契約を結んでも、連邦自動車庁への新車登録などの手続きが同18日までに終わらないと、政府補助金を受け取れない。独自動車工業会(VDA)は、「消費者の中には、政府の補助金のために負担が少なくなると思ってEVを買った人もいる。突然の廃止は、市民の政府への信頼を損なう」と指摘した。こうした市民のためにメーカーは「救済措置」を発表。フォルクスワーゲンは、「24年2月末までに登録された新車EVは、顧客が政府から受け取れるはずだった補助金の額を当社が支払う」と発表した。
自動車製造業中央連合会(ZDK)のヨズヴィヒ会長は、FAZに対して「突然の廃止は市民に大きな損害を与える。少なくとも市民の負担は2億7000万ユーロ(432億円)増える」と指摘。自動車輸入業連合会…
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週刊エコノミスト
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