教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

ぺアを組んでいる職場の先輩は私の嫌いなお酒やタバコが好きで我慢できません/199

アダム・スミス(1723~1790年)。スコットランド出身の哲学者、経済学者。道徳哲学から経済の仕組みを説いたことで知られる。著書に『道徳感情論』などがある。(イラスト:いご昭二)
アダム・スミス(1723~1790年)。スコットランド出身の哲学者、経済学者。道徳哲学から経済の仕組みを説いたことで知られる。著書に『道徳感情論』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q ぺアを組んでいる職場の先輩は私の嫌いなお酒やタバコが好きで我慢できません 職場の先輩とペアを組んで仕事をしています。その先輩は私の嫌いなお酒やタバコを愛好しているのですが、どうしても共感できません。態度に出るのか、最近関係性まで悪くなってきて困っています。(会社員・20代女性)

A 嗜好品自体を否定せず、互いに違うメニューを楽しんでいるようなものと考えよう

 人の嗜好(しこう)というのは十人十色、さまざまです。皆それぞれ自分の好む嗜好品によって日常を楽しんだり、ストレスを解消したりしているのでしょう。ところが、他者の嗜好が気に入らないとなると、厄介な問題を生じてしまいます。

 そこで参考にしたいのが、スコットランド出身の哲学者アダム・スミスです。スミスは経済学者としても知られていますが、もともとは道徳哲学を専門としていました。その彼にいわせると、人間とは同感を快楽とし、それゆえに同感を求める生き物だということです。

 スミスはこれを「相互的同感の快楽」と呼んでいます。ただ、同感を求めるものの、一人ひとりの人間は本来異なる存在であり、何をいいと感じるかは人それぞれです。だとするならば、まったく同じ気持ちになろうなどという態度は、かえって問題を生み出しかねません。

響き合えばうまくいく

 だからスミスは、同音(ユニゾン)ではなく、協和音(コンコード)を求めよというのです。まったく同じ気持ちは無理でも、お互いに響き合えばうまくやっていけるわけですから。この協和音という例えは、社会における現実的な同感を可能にする発想だといっていいでしょう。ここで無理に同音にこだわると、不協和音を生み出してしま…

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