教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

自分の決断に自信が持てず、それでよかったのかと気になります/200

セクストス・エンペイリコス(2世紀〜3世紀ごろ)。ローマ帝国期ギリシャの懐疑主義哲学者。医学者でもあった。著書に『数学者に対して』などがある。(イラスト:いご昭二)
セクストス・エンペイリコス(2世紀〜3世紀ごろ)。ローマ帝国期ギリシャの懐疑主義哲学者。医学者でもあった。著書に『数学者に対して』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 自分の決断に自信が持てず、それでよかったのかと気になります 自分の決断に自信が持てません。管理職という立場上、一応決断はしているのですが、いつもそれでよかったのかと気にしています。(会社員・40代男性)

A「懐疑主義」の考えで判断を保留し、まずは心の平静を得ましょう

 私たちは日々決断をしながら生きています。でも、それが正しかったのかどうかはわかりません。だから気にしだすときりがないのでしょう。そこで参考になるのは、古代ギリシャの哲学者セクストス・エンペイリコスの懐疑主義です。

 セクストスによると、人が物事を探求するには三つの態度があるといいます。必ず答えを発見するか、発見不可能だと割り切るか、それでも探求し続けるかのいずれかです。この三つ目の、探求し続ける態度を懐疑主義といいます。

 懐疑主義とは「現れるもの」と「思惟(しい)されるもの」とを対置する能力であり、それによって結果が矛盾するがゆえに、判断を保留することをいいます。つまり、目の前で起こっていることに対し、それに対抗する逆のことを考えると、両者が矛盾することがわかります。だとすると、どちらともいえるので、あえて判断をしないでおくのです。実際、どんなことに対しても、必ず反対のことがいえるものです。

 そうすると、結果として心の平静がもたらされます。なぜなら、もはや決める必要がないので、あっちがよかったとか、こっちがよかったというふうに心が乱されることがなくなるわけです。

 とはいえ、何も選ばないと前に進めないと思われるかもしれません。でも、その心配はありません。なぜなら、私たちは常に何かを手にしているはずです。つまり現状です…

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