教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

何をやっても若い時のようなやる気がでない/201

トリスタン・ガルシア(1981年~)。フランスの哲学者。美学をはじめ、さまざまな領域で新たな哲学を展開している。著書に『イメージ』(未邦訳)などがある。(イラスト:いご昭二)
トリスタン・ガルシア(1981年~)。フランスの哲学者。美学をはじめ、さまざまな領域で新たな哲学を展開している。著書に『イメージ』(未邦訳)などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 何をやっても若かりし頃のエネルギーが湧いてきません 最近何をやっても若かりし頃のエネルギーが湧いてきません。仕事も頑張ってはいるのですが、昔のように熱中することはありません。どうすればいいでしょうか?(会社員・50代男性)

A 世界の変化に目を向け、初めての体験を増やして、平凡な日常に風穴を開けよう

 体は元気できちんと仕事もしているのに、どうしても若い頃のようなエネルギーが湧いてこない。中高年を中心に、こういう悩みはよく聞きます。つまり、これは気持ちの問題だと思うのです。そこで参考にしたいのは、現代フランスの気鋭の哲学者トリスタン・ガルシアの思想です。

 ガルシアはintensitéについて論じています。日本語では「強さ=激しさ」と訳されるフランス語です。彼はこの言葉を近代以降の人間の倫理として描こうとします。それはガルシア自身が例えているように、まさに近代に登場した電気のごとき力に、ほかなりません。

 もっとも、ガルシアの議論全体を見ると、必ずしもこうした意味での「強さ=激しさ」を手放しで称賛しているわけではありません。ただ、少なくとも平凡な私たちが激しく生きるためには、そんな電気のような力が役に立つといえそうです。

生に強さ生じさせる策略

 では、どうすれば「強さ=激しさ」を手にすることができるのか? ここでガルシアは「強さ=激しさ」という名の倫理を実行するための三つの策略を挙げています。一つ目は変異です。彼は音楽における抑揚を使って説明しているのですが、それと同じで私たちのあらゆる経験には抑揚があるはずなのです。その細かい変化に着目することで、生に強さが生じるといいます。二つ目…

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