今年最大の国際的リスクは米国内政 高まる政治的暴力への懸念 西田進一郎
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年始の話題の一つが、その年の国際情勢の展望や起こりうる危機に関する評価だ。調査機関や研究機関などが独自の視点と情報網で分析し、1月に発表している。
その代表格で、世界中で紹介されたり、引用されたりしているものの一つに、国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いる調査会社「ユーラシア・グループ」が発表している「10大リスク」がある。今回は、最大のリスクとして11月の大統領選に向けた米国内の政治的分断を挙げた。「米国の政治システムは他の先進的な民主主義国家よりも機能不全」と分析し、誰が勝っても分断と機能不全は深刻化すると指摘した。
ある程度予想できる結果だった。1年半前にインタビューした際、ブレマー氏が眉間(みけん)にしわを寄せて力説していたのが、2024年大統領選が「壊れる」「盗まれる」「敗者が『自身が正当だ』と主張する」という可能性だった。政治的暴力の危険性が時間とともに増すことへの警戒感を強調していた。
一方、やや驚いたのは、その数日前に米外交問題評議会(CFR)が公表した報告書だった。CFRは、その名の通り国際政治や外交問題に関する研究をする民間の非営利組織で、米政府の外交政策に対する影響力もある。世界で起こる可能性がある危機について評価する「予防優先度調査」を08年から実施している。
当然、対象は米国外や国外に起因する紛争であり、国内で発生する混乱などは対象外。ところが、今回は評価対象を募った23年秋の段階で「米国内での政治的動機による暴力」への懸念が強く表明され、「もはや無視できない」と判断して対象に加えたという。
すると、政府職員や外交政策の専門家ら約550人が評価した結果、最も懸念される危機は「米国内で大統領選前後に起きるテロや政治的暴力行為」だった。何とも皮肉な結果と言うしかない。
政府職員への暴力「急増」
米国内の分断と政治的暴力への懸念と緊張は、それほどまでに…
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週刊エコノミスト
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