製造・サービス業ともに頭打ちの日本経済 藻谷俊介
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前回の当連載(2023年12月19日号)で、サービスのインフレ率の推移などから見て、日本も金利の正常化が促されていることを述べた。
しかし、この状況が続くとは限らない。この2カ月間に発表された統計を見ると、インバウンドを中心に急速にサービス需要が冷え込んでいる様子が示されている。対する製造業には一向に火が付かない。目下の株高もあり、世論は今なお楽観的だが、脇が甘くなっていることが多少心配である。
図1は、日本の2大生産統計である鉱工業生産指数(製造業)と第3次産業活動指数(サービス業)を、四半期ベースで並べて表示したものだ。厳密には、これ以外に農業、建設、公共サービスの生産も存在するが、国内の生産活動のほとんどはこの2本の線に含まれていると考えてよい。また、これらは実質生産であり、価格上昇による見かけ上の増加は含まない。
一見して分かることは、今回の回復局面において、製造業の生産量はまったく伸びていないということだ。つまり、回復はそのほぼすべてがサービス生産の増加であったわけである。そのこと自体は悪くないが、実質サービス生産では過去を上回るような水準に達したわけではなく、あくまでインフレや価格転嫁によって名目売り上げが急増しただけで、日本人の活動量ないし生産性が新次元に入ったのではないことは認識すべきだろう。
そして今、その実質サービス生産がこの回復局面で初めて大きく下折れしてい…
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週刊エコノミスト
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