20・30代の貧困が増えて世代内格差が広がる 坂田紘野
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若年層の賃金上昇がいわれるが、内実は世代内の格差拡大だ。少子化加速を招く恐れがある。
少子化加速も恐れも
少子化の一因として、経済的に苦しい状態にある若年層の存在が指摘されている。この背景にあるのが、若年層内の「世代内経済格差」の拡大だ。経済格差が拡大したことで、貧しい若者はかつてよりも経済的に厳しい状況に置かれていることが想定される。
注意したいのは、統計上では、近年、若年層の賃金は上昇傾向という数字になっていることだ。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、25~29歳の賃金は、月換算で22.8万円(2013年)から25.1万円(22年)。30~34歳では26.1万円から28.1万円に上昇している。賃金を物価で割る実質賃金水準の推移でも、賃金は上昇している。全体の数字では確かに上昇しているが、それは、貧しい若年層の減少を、必ずしも意味していない。
30代で格差拡大
ファクトから若年層の間で世代内経済格差が拡大している点を確認したい。所得などの分布の均等度を示す指標としては、「ジニ係数」が広く知られている。ジニ係数は、0から1までの値をとり、0に近いほど分布が均等、1に近いほど不均等であることを表す。
厚労省の調査を基に、各世代内における所得(当初所得)のジニ係数の推移を確認すると、中高年世代はジニ係数が小さくなる傾向が見られるのに対し、30代が世帯主である世帯のジニ係数は以前よりも大きくなっていることが分かる(図1)。これは、30代世帯の労働所得の格差が大きくなっている、すなわち世代内経済格差が広がっていることを意味している。
実際、世帯主の年齢が30代の世帯所得について、「全国家計構造調査」から09年と19年の分布を比較すると、単身世帯は10年間で所得分布に大幅な変化は見られない一方で、2人以上の世帯の所得分布は、19年のグラフの方が右寄りになっている(=世帯所得に増加傾向が見られる)ことが確認できる。(図2、3)。2人以上の世帯は単身世帯よりも世帯所得が高い傾向にあることを踏まえると、このような所得分布の推移は、30代で所得の世代内格差が拡大しているという図1と整合的であると考えられるだろう。
また、経済格差という観点からは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の所得格差もしばしば取り上げられる。非正規雇用労働者の賃金は、男女いずれも正規雇用労働者よりも低い水準にとどまる。加えて、非正規雇用労働者の賃金カーブがほぼ横ばいに推移していることから、労働者にとって、将来賃金が上昇するだろうとの期待感も乏しくなると思われる(図4)。
さらに、従業員に占める非正規雇用労働者の比率の推移を見ると、女性非正規雇用労働者の比率が、25~34歳で00年に32.0%だったのが、23年に30.6%、35~44歳では00年の53.3%から47.9%(23年)と低下しているが、男性非正規労働者比率は、25~34歳で5.7%(00年)から14.9%(23年)、35~44歳で3.8%(00年)から9.0%(23年)に上昇している。特に若年男性層では、安定した経済基盤を確保できていない人の割合が高まり、安定した経済基盤を確保できた人との経済格差が生じている可能性が懸念される。
高齢者中心の所得再分配
経済格差縮小のために重要なのが、政府による所得再分配の機能が発揮されることだ。日本での所得再分配に関しては、税や社会保険料が主な財源となっている。
日本全体で見た時に、「租税負担率」と「社会保障負担率」を合計した義務的な公的負担である「国民負担率」は、上昇傾向にある。財務省によると、70年度に24.3%であった国民負担率(対国民所得比)は、23年度には46.8%にまで増大する見通しだ。さらに、将来世代の潜在的な負担である財政赤字を含む国民負担率の23年度見通しは、53.9%にも達する。
税や社会保険料は、所得の再分配を通して国民に還元されるし、税や社会保険料を負担しているのは若年層に限った話ではない。しかし、社会保障給付の大半は、年金・恩給、医療、介護であり、これらは主に高齢者世帯に給付されている点に留意する必要があろう。世帯主の年齢階級別に所得再分配状況を確認すると、65歳未満でマイナス、65歳以上でプラスとなっている。若年層を含め、現役世代は当初所得よりも再分配所得の方が少ない状況となっている(図5)。
さらに、足元では超高齢社会の進展などを背景に、税や社会保険料の負担は、実収入の増加を上回る水準で増加している。その結果、可処分所得の伸びは実収入よりも低い水準にとどまっており、実収入の増加が消費支出の増加につながっていない。この点も、苦しい経済状況にある若年層にとって、生活の苦しさを一層感じさせるものとなっていると思われる。
春闘で格差拡大
岸田文雄政権…
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週刊エコノミスト
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