日本の活断層/4 濃尾断層帯(岐阜・福井県) 世界最大級の内陸直下型地震も/176
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岐阜県美濃地方で1891年10月、マグニチュード(M)8.0の濃尾地震が発生した。国内観測史上最大の内陸直下型地震であり、世界でも最大級である。震源は東西方向に地殻が圧縮される「新潟─神戸ひずみ集中帯」と呼ばれる領域に含まれ、このひずみ集中帯では1995年の阪神・淡路大震災など内陸地震が多発している(本連載の第175回を参照)。
濃尾地震は濃尾平野の広い範囲で現在の震度階級で最大震度7を観測し、震度6強の揺れが広範囲を襲った。揺れは九州全土と東北地方まで達し、死者7273人、全壊家屋14万戸に上った。激しい揺れによって土地の亀裂や隆起が生じ、道路寸断2万カ所、橋梁(きょうりょう)損落1万カ所、堤防決壊7000カ所、山崩れ1万カ所など大きな被害が生じた。
震源となった根尾谷(ねおだに)の水鳥(みどり)(本巣市)には垂直に6メートルの段差が現れた。地震で生じた地下深部の岩盤のずれが、地上まで達して断層となった例である。阪神・淡路大震災で約1メートル垂直にずれた野島断層(兵庫県淡路市)と比べても、いかに大きかったかが分かる。この断層崖は「根尾谷断層」として1927年、国の特別天然記念物に指定された。
濃尾地震は岐阜県から福井県にまたがる主要活断層帯「濃尾断層帯」のうち、根尾谷断層帯、梅原断層帯、温見(ぬくみ)断層北西部の三つの断層が連動して活動した。過去の根尾谷断層のトレンチ(溝)発掘調査の結果、過去1万2000年に6回断層活動をしたことが分かっており、約2000年に1度の頻度で地震を起こしていることになる。
地震は地下の断層が動いて起きるという考え方は、濃尾地震で地上に現れた長さ80キロメートルにわたる根尾谷断層の研究から始まった。明治政府が招聘(しょうへい)した外国人教師ジョン・ミルンはウィリアム・バートンとともに地震直後に現地に赴いて調査を行った。ミルンに師事した東京帝国…
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週刊エコノミスト
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