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教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

社員研修の経験を職場にいかすには?/204

森有正(1911~1976年)。日本の哲学者。フランスに渡り、日本を批判的に考察したことで知られる。著書に『バビロンの流れのほとりにて』などがある。(イラスト:いご昭二)
森有正(1911~1976年)。日本の哲学者。フランスに渡り、日本を批判的に考察したことで知られる。著書に『バビロンの流れのほとりにて』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 社員研修での経験を職場全体に持ち帰ってもらう方法は? 個々の社員が研修で経験したことを、職場全体に持ち帰ってもらいたいのですが、なかなか実現しません。個人のスキルアップも大事ですが、あくまで会社の代表として学んでもらっているつもりです。どうすれば改善できるでしょうか。(人事部勤務・50代男性)

A 個人的な「体験」を、客観性に基づく「経験」へと昇華させましょう

 そうですよね。高いお金を払って研修を受けてもらっても、その個人のスキルアップにとどまるのではもったいないですよね。これは何も研修だけの話ではないように思います。職場やチームで仕事をしている場合、個々人の経験が他のメンバーと共有されることで初めて、組織の力が生かされるように思うからです。

 そこで参考にしたいのは、日本の哲学者・森有正の思想です。森は、「経験」と「体験」の違いを論じたことで知られています。日ごろ私たちも経験という言葉と体験という言葉をあまり区別して使っているようには思えません。

 森は終戦直後、長年フランスに暮らし、そこから日本を批判的に論じました。戦争へと突き進み、またそこからきちんと敗戦を処理できないでいる近代日本を、経験ではなく体験しかできない国民として捉えたのです。

変貌できる要素はどっち

 たしかに欧米には経験を意味する語「エクスペリエンス」しかなく、体験という言葉はありません。辞書を引いてみても、体験は「パーソナル・エクスペリエンス」などと出てきます。つまり、体験とは主観的なものなのです。

 だから森は、経験を高く評価します。経験は客観的であるのに対して、体験は主観的なものにとどまると。それゆえに経験に…

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