世界に広がる印象派の革新性 愛おしい日常のワンシーン 石川健次
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美術 印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
19世紀後半のパリで花開いた印象派は、フランス国内にとどまらず、今日に至るまで世界中の人々を魅了し続けている。アメリカ・マサチューセッツ州第2の都市、ウスターにあるウスター美術館が誇る印象派コレクションから、ほとんどが初来日という傑作を中心に紹介するのが本展だ。
モネやルノワール、ピサロら印象派を代表する巨匠の作品が並ぶのはもちろんだが、「『印象派』という言葉が誕生して150周年」(本展図録)という節目に開かれた本展は、それらスーパースターが勢ぞろい風の展覧会とはひと味もふた味も違う。
遠くのものほど小さく描く遠近法や光と影など明暗の対比で立体感を出す明暗法など、長く根づいていた西洋の伝統を一気に覆した印象派の革新性は、衝撃を受けた同時代の他の画家によって世界へ広がり、変化、深化してゆく。ヨーロッパ諸国や日本、とりわけアメリカで展開した印象派の諸相に、変化や深化に本展は迫る。
最後となった第8回印象派展が開かれた1886年にパリへ留学したアメリカのチャイルド・ハッサム(1859~1935年)は、本展の言葉を借りると、アトリエよりも戸外での制作を、計画性よりも即興性を、壮大さよりも日常性を、永遠よりもはかなさを重んじる印象派に強く影響を受けた。
帰国後は印象派をアメリカ国内に広める先駆者となり、“アメリカのモネ”とも呼ばれた。一方、それら印象派の諸要素を応用して独自の様式を形成した。図版は、ハッサムが留学中に描いた作品だ。力強い筆づかいや明るく鮮やかな色彩、非対称の構図など、“アメリカのモネ”の片鱗(へんりん)をうかがえるだろ…
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週刊エコノミスト
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