ロシア念頭に英国で徴兵制議論 陸軍大将が「市民軍」創設訴え 木村正人
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北大西洋条約機構(NATO)に否定的な発言を繰り返すトランプ前米大統領が、11月の米大統領選で返り咲く可能性が強まっている。そんな中、英軍のパトリック・サンダース陸軍参謀総長(大将)が政府方針に反して、「英国が紛争に巻き込まれる場合に備え、市民を訓練して装備を整え、市民軍を創設する必要がある」と講演し、徴兵制論議を巻き起こした。
ウクライナが一般市民の志願兵や徴集兵でロシア軍に抵抗したことが念頭にある。左派英紙『ガーディアン』は社説(電子版、1月25日付)で「平和の時代が去り、戦争の時代が視野に入る中、英国はスウェーデンを見習い、社会全体が戦争できる状態にする準備段階に入ることが不可欠だとサンダース大将は唱えた」と検証している。
第二次大戦後の1950年に70万人を数えた英陸軍は2025年までに7万2500人に減少する。サンダース陸軍大将は「3年以内に正規軍、予備役、有事の際に退役軍人を呼び戻す戦略的予備役を含む12万人規模の陸軍を持つべきだ」と主張した。社説は「彼の危機感は英国に限らず、軍事・国防界における実際の議論を反映している」と一定の理解を示す。
ヒーピー英軍担当閣外相は軍隊と市民を合わせた50万人という数字を挙げる。15年に10年間の兵役を終えて退役したヘンリー王子(王位継承順位5位)も対象になる。「ウクライナは正規軍が戦争を起こし、市民軍がそれに勝つという事実を残酷なまでに突きつけている」(サンダース陸軍大将)
しかし社説は「市民軍がどんな規模であれ、徴兵制の軍隊を意味しかねない。英軍が徴兵制に頼ったのは300年以上の歴史のうち25年ほどで、国家が最も必要とする時だけだ。今がその時なのか。多くの人は納得しない。大戦後の徴兵制は不評で1960年に廃止された」と指摘する。
英世論調査会社「ユーガブ」によると、新たな世界大戦が起きた場合、18~40歳男性の12%が軍…
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週刊エコノミスト
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