“もしトラ”は世帯負担を年39万円増やし米国の貿易赤字を拡大させるとの声 岩田太郎
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米大統領選挙が11月に迫る中、2017~21年の1期目に保護主義的な政策を実行したトランプ前大統領が返り咲く「もしトラ」の議論が米論客の間で盛んだ。特に注目されるのが、「第2次トランプ政権」の関税率大幅引き上げなど、世界経済を左右し得る通商政策だ。
米経済専門局CNBCは2月4日の番組で、大統領選で共和党候補になることが確実視されるトランプ前大統領が中国製品に60%あるいはそれ以上の税率の関税をかけると発言したことを報じ、「各方面からの批判にもかかわらず、(日本など同盟国を含む)それ以外の国からの輸入品にも一律10%の関税を課すと主張している」と伝えた。
共和党内の大統領予備選でトランプ氏と指名を争うニッキー・ヘイリー元国連大使は同番組に出演し、「トランプ氏の通商政策が実行されれば、すべての米世帯で年平均2600ドル(約39万円)もの負担増になる」との試算を紹介し、前大統領を強く非難した。
CNBCはさらに、「18年に当時のトランプ大統領が中国に報復関税を課して以来、24万5000人分の米国人の雇用が失われ、米家計で1950億ドル(約29兆2500億円)の負担が増えた」との推計を示した。また同番組は、「互いの最大の貿易相手である米中間の関税紛争は、両国間の地政学的関係をも悪化させた」との見方を示した。
米バージニア大学のビジネススクールで教鞭(きょうべん)を執る経済コンサルタントのニコラス・サージェン氏も2月16日付の米政治サイト「ザ・ヒル」への寄稿で、「トランプ前大統領の通商政策は、世界に平和と繁栄をもたらしてきた戦後秩序への大きな脅威だ。投資家は、見過ごすわけにはいかない」と論じた。
世界経済の分断を加速
こうしたトランプ氏の通商政策実行の懸念をさらに強める要因として、米ニュースサイトの「ビジネス・インサイダー」は2月11日付の解説記事で、「米国・中国・欧州の経済はすで…
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週刊エコノミスト
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