独ショルツ政権の再エネ方針に“非現実的”と見直し要請も 熊谷徹
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ドイツのショルツ政権は2030年に電力消費量の80%を再生可能エネルギーで賄うことを目指している。政府は2月5日、太陽光や風力が少ない時のバックアップ電源(調整力)として水素火力発電所を使う方針を打ち出した。
独日刊紙『南ドイツ新聞(SZ)』は2月5日付電子版で「連立与党は、水素対応が可能な天然ガス火力発電設備(合計容量1000万キロワット)への投資を促進するため、助成金を決める入札を今年後半から4回実施することで合意。政府は今後20年間に、気候保護エネルギー転換基金(KTF)から160億ユーロ(2兆5600億円)を投じる」と報じた。
SZによると、電力会社はこれらの発電設備の燃料について、当初天然ガスを使うことを許されるが、40年までに100%水素に切り替えなくてはならない。
またショルツ政権は、「電力需給の逼迫(ひっぱく)に備えるために、28年までに容量市場を創設する」と発表。通常電力会社は、発電した電力の販売で対価を得るが、容量市場では数年後に電力を供給する約束(キャパシティー)について対価を得る。従来独政府は容量市場創設に反対してきたが、再エネ拡大の加速や、ロシアのウクライナ侵攻に伴い市場環境が変わったとして、初めて容量市場創設を決めた。
予算節約に迫られ
ドイツ公共放送連盟(ARD)は2月5日付のウェブサイトで「去年8月に政府が水素対応型天然ガス火力発電設備に関する助成を発表した時には、新設容量は2380万キロワットになると説明していたが、今回発表された容量は、半分以下に減らされた」と指摘した。この原因は、昨年11月に連邦憲法裁判所が下した違憲判決の影響で、政府が24年以降の予算の節約を迫られたためと見られている。
だが、政府の計画については批判の声が上がっている。独日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』(3月8日付紙面)によると、連邦会計検査院は、「…
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週刊エコノミスト
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