立憲民主は好機を生かせるか カギは結集の旗印となる「言葉」 与良正男
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「4月のやけくそ解散はあり得る」──。立憲民主党の泉健太代表が、このところ、こんな発言を繰り返している。
新年度予算が成立すれば、岸田文雄首相が衆院の解散・総選挙に踏み切る環境は整うというだけではない。泉氏が具体的に語っているのは、4月28日に投開票される衆院東京15区、長崎3区、島根1区の3補欠選挙に合わせて総選挙を実施する日程だ。
補選はいずれも自民党の苦戦が予想される。仮に自民党が全敗、あるいは1勝2敗と負け越せば、自民党内には「やはり岸田首相の下では選挙は勝てない」という空気が一気に広がるに違いない。
そうなれば、菅義偉前首相と同様、秋の自民党総裁選には出馬せずに退陣する状況に追い込まれるかもしれない。それを回避するため、この際、一気に総選挙を……というわけだ。
確かに泉氏が言うように「やけくそ解散」に近く、岸田氏も国会答弁で否定している。
それでもなお、こんな臆測が語られるのは、岸田氏がそこまで追い詰められているからにほかならない。そして泉氏が再三、4月選挙に言及するのは、これまで、いつ首相が衆院を解散するのか、絶えずおびえてきたのとは一転して野党の方が早期の総選挙を望み始めている表れでもある。
国民民主の自民離れ
では、立憲民主党はこの好機を生かせるだろうか。2月4日の党大会で泉氏が「次の衆院選で自民党を政権から外す」と力説したように、政権交代を実現させることができるだろうか。
毎日新聞が2月17、18日に実施した全国世論調査では、岸田内閣の支持率は14%にまで落ち込むと同時に、自民党の支持率も前回比7ポイント減の16%となった。
対する立憲の支持率は、前月から2ポイント増えて自民党と同じ16%。拮抗(きっこう)する水準に達している。
旧民主党政権について、有権者は「だめだった」の一言で済ませてしまう思考停止状態に陥っている──と、私はかねて指摘してきた。だが、その世論も変化し始めているのは確かだろう。
野党の中にも動きがあった。
国民民主党が、ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」の凍結解除に関する与党との協議から離脱したことだ。
国民民主は政策実現のためには与党との協調を排除しない姿勢を示してきた。本予算にも2度、賛成して岸田政権に接近し、一時は連立与党入りするのではないかとさえ言われてきた。
ところが玉木雄一郎代表が「政治生命をかける」と言ってきたトリガー条項の凍結解除は一向に実現しない。加えて自民党の裏金事件である。玉木氏も自民党にこれ以上、近づくわけにはいかないと判断したと思われる。
ただし、それでは立憲民主党と直ちによりを戻すのか、とい…
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週刊エコノミスト
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