教養・歴史書評

生成AIは人類の創造力を確実に上回る 孫崎享

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 私は日々ブログとXで情報発信をしている。ここ数年で、その環境が大きく変わった。いま、毎日Xで情報が入る。アラビア語もある。Google翻訳にかけると瞬時に日本語になる。長文の英語やロシア語の論評も瞬時に日本語になる。

 AI(人工知能)は日々変化し、我々の環境を変えている。その中で特に注目されるのが生成AIだ。生成AIというと分かりづらいが、「創造的AI」とすれば分かりやすい。

 この生成AIに関し、『生成AIで世界はこう変わる』(今井翔太著、SB新書、990円)が出版された。これが私にとっては「目から鱗(うろこ)が落ちる」的な本であった。

 生成AIの言語モデルの作り方を見てみよう。例えば次のような具合。

「次の文章を読んで、最後の( )の中に入る単語を考えてください」として「このりんごは( )」という一文を提示し、解答の選択肢として、①アインシュタイン、②黄色い、③おいしい、④行く、と四つを挙げる。こうした穴埋め問題を学習しながら、文法的におかしい、意味的におかしいなどと考え、言語モデルを作り上げる。( )内に入る言葉は無限に広がるから、関連情報を入れておけば、無限の選択から最適なものを選択できるというわけだ。この本では生成AIに対し、「バットで地球に飛来した隕石(いんせき)を打ち返そうとする猫」という指示を与えた際に出てくる画像を紹介している。その絵を見てつくづく感じるが、これだけの絵を瞬時に描ける人はまずいないであろう。

 私たちは「創造的能力」は人類の特権のように思っていたが、学術面であれ、芸術面であれ、AIは確実に人類の上を行っている。将棋の世界で藤井聡太氏が八冠で全盛を迎えているがAIはその上である。全ての「創造的分野」でAIは人類の上に行く。それが人類の未来だ。

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 戦争は人類の究極の愚行だ。我々は何故この愚行を行うのか、繰り返し問うていく必要がある。こ…

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週刊エコノミスト

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