FRBの「次は利下げ」は本当か 藻谷俊介
2022年から23年にかけて日米それぞれの中央銀行が反対向きの金融政策を指向してきたことは周知の事実である。ただ、23年の終わりごろから、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げ、日銀は利上げ(マイナス金利解除)をほのめかすようになり、両者は歩み寄るというのが市場のコンセンサスになっていた。
しかし、経済情勢は当局の思い通りに進むとは限らない。前回の当連載(2023年2月13日号)でも述べたように、日本の経済統計は鉱工業生産、第3次産業活動指数がともに下げ基調に転じ、労使の妥結がどうであれ、賃金の原資である企業収益に黄信号がともっている。日銀が石橋をたたいているうちに、橋にひびが入ったと言うと皮肉に過ぎるだろうか。
一方FRBも、簡単には利下げできない情勢になっている。非農業部門雇用者数のリアルタイムの伸び(季節調整後前月比伸び率3カ月平均年率換算値)は、2月にかけて再び加速方向へと切り替わっており、沈静化していた景気は再加速が明らかである(図1)。当然それは賃金や物価を押し上げる。
読者はご記憶かもしれないが、昨年の筆者のFRB批判の核は、消費者物価のうち執拗(しつよう)にインフレ率を引き上げていたのは家賃と自動車保険であって、パウエルFRB議長がほのめかしていたような好景気と人手不足によるインフレは見当たらないということであった。家賃や保険は、人手不足が原因で上がったりしないの…
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週刊エコノミスト
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