ピアニスト2人の友情で継続 今年も世界の才能が結集 梅津時比古
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クラシック 未来を創る 第24回別府アルゲリッチ音楽祭
地名を冠した音楽祭は「バイロイト音楽祭」「ザルツブルク音楽祭」「東京・春・音楽祭」をはじめ枚挙にいとまが無い。作曲家の名を付けた音楽祭も「バッハ音楽祭」(各地)「ボン・ベートーヴェン音楽祭」などかなりある。だが演奏家の名を表した音楽祭は数えるほどしかない。スペイン内戦を避けてフランス・プラドに蟄居(ちっきょ)した名チェリスト・カザルスを音楽家たちが引っ張り出した「プラド・カザルス音楽祭」、実質的に“リヒテル音楽祭”と呼ばれることもあった、リヒテルがフランスの農園で始めた「トゥール音楽祭」、先日亡くなった小澤征爾が主宰の「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」……。大きなものではそのぐらいだろうか。
それだけに、1994年、大分の地にアルゲリッチが降り立った時から数えると今年30周年になる「別府アルゲリッチ音楽祭」は世界でも大変重要な音楽祭である。なぜなら、世界の名ピアニストの歴史においても既にして特等席を与えられているアルゲリッチが毎回出演するばかりでなく、共演者も彼女のセンスに合う演奏家が選ばれているからである。ヴァイオリンのクレーメル、チェロのマイスキーなど結果として大物がそろっているとはいえ、決して売れる要素から招聘(しょうへい)されているわけではない。むしろ、出演の難しい演奏家が、アルゲリッチの呼び掛けに応じて来演すると言ったほうが正確である。とはいえ、ひとつの音楽祭を長年、持続させるのは困難を極める。最初にアルゲリッチを大分に連れてきて以来、アルゲリッチとの友情を深め、コンサートを徐々に拡大しながらこの音楽祭を作り…
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週刊エコノミスト
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